迫る猛火「窓から飛び降りて!」 客を逃がし、男性は意識を失った
山崎輝史
「まずは女性と子どもを飛び降りさせて、最後に自分が……」
なじみの居酒屋で、男性(48)は火災に遭った。
あっという間に2階の客席に火の手が回った。
男性はほかの客をせき立てた。
階段は使えない。窓しか逃げるすべはなかった。
渋る人もいたように思う。男性の記憶はそこで途切れた。
4月11日、名古屋市千種区の居酒屋。木造2階建てで、岐阜県の郷土料理「鶏(けい)ちゃん」が売りの店だった。
愛知県内の新型コロナウイルス感染者は増加の兆しをみせ、「まん延防止等重点措置」の適用が話題に上がっていた。
日曜日の夜で、2階は子どもや若い女性を含めた複数のグループでにぎわっていた。
男性はこの日、この店の店長の男性に呼ばれて来店した。
店長とは以前からの友人で、数年前に開店したと聞き、たまに通うようになった。
最初は1階の数席だけで営業していたが、その後、2階を改装して客席を増やした。
異変に気づいたのは、2階に上がった直後だ。
午後7時ごろ、階段から熱気と煙が上がってきた。
「ただ事じゃない」
炎が迫ってきた。脱出路は道…