失業者のみこむ巨大な非公式経済 メキシコ、派遣禁止で解雇相次ぐ

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メキシコ市=岡田玄
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 メキシコで会った派遣の技師から職を失ったと連絡を受けた。一流大学を卒業し、順調に経験を積んでいた。左派政権が4月、派遣労働を原則禁止したことで、正社員への期待も抱いた。解雇となった背景には、巨大なインフォーマルセクター(非公式経済)の問題がある。

おかだ・げん 1978年生まれ。中南米とカリブ地域を担当。ツイッターアカウント@OkadaGでつぶやいています。

 国旗が街を埋め尽くすメキシコ独立記念日の9月16日、メキシコ市で会ったベルナベ・モンテスデオカさん(26)の表情は浮かなかった。派遣労働が原則禁止されたことで、最悪の場合、職を失う不安にさいなまれていたからだ。

 地下鉄の整備工場で非正規雇用の設計技師として働く。2年前、名門メキシコ国立自治大学の工学部を卒業したが、求人は派遣労働ばかり。正規に雇用された友人は一人もいなかった。「経験を積むには派遣労働を受け入れるしかなかった」

 人材派遣会社と契約し、1年前に現在の仕事を得た。1カ月の給料は約8千ペソ(約4万5千円)。手取りの額こそ正規雇用の社員より少し多いが、正社員なら当たり前のクリスマスボーナスも、日本の健康保険にあたる社会保障や年金積み立てもない。

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地下鉄整備工場で派遣労働者として働いていたベルナベ・モンテスデオカさん。正規雇用されず、失業した=2021年9月16日、メキシコ市、岡田玄撮影

 昨年はコロナ禍で高齢の両親に感染させまいと一時、家を出た。小さな部屋の家賃は6200ペソ(約3万5千円)。「親から食料を支援してもらって、なんとか暮らせた」。大学時代の友人のほとんどが親と同居だ。

 正規採用されるか解雇となるか。企業に与えられた移行準備期間は9月1日まで。すでに期限を過ぎており、次の日、方針を通告されるという。

 「結婚どころか一人暮らしさ…

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