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分娩受け入れ地域で1カ所 医師の不足と偏在どう解消 青森・下北

2021衆院選

安田琢典、土肥修一
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 人口減に苦しむ青森が歩むべき道を、衆院選の機会に考えたい。今日は医師不足に直面する下北地方から。

 「へき地に住んでいるだけで、なぜこれだけ出産にハンディがあるのか」

 下北半島の西端、佐井村に住む主婦の高山恵子さん(37)は、昨年3月に第1子を出産したときのことを、そう振り返る。

 村にお産を扱う医療機関はなく、一昨年8月に妊娠がわかると、診察のため隣接するむつ市のむつ総合病院まで、自ら車を運転して通った。

 4カ月後、胎盤が子宮口を塞ぐ前置胎盤で出血。救急車が自宅に着くまで30分以上かかり、病院までさらに1時間半かかる。漁師の夫は海に出ていて携帯電話が通じない。結局、ドクターヘリで搬送された。

 その後、リスクの高い妊婦に対応できる弘前大病院に入院。夫は数日に1回、漁の合間を縫って村から車で4~5時間かけて、見舞いに来てくれた。

 「都市部ならば病院の特徴や医師との相性を考えて病院を選べるが、ここでは無理。新しい病院を建てるのは難しくても、せめて今ある病院の体制を拡充してほしい」と話す。

 下北地域でお産ができる医療機関はこれまで、むつ総合病院のほか、むつ市にもう一つ、産婦人科のクリニックがあった。しかし、医師が高齢を理由に今年5月末に分娩(ぶんべん)受け入れを中止。そのため、むつ総合病院では年間200件ほどだった分娩件数が、1・5倍に増える見込みという。

 同病院の産科婦人科の常勤医は4人。緊急対応に備え月の半分は自宅待機し、完全な休日は月に4日程度しかない。石原佳奈・産科部長は「下北半島の『分娩のとりで』として頑張っている。医師も助産師も数が増えれば環境は改善されるだろうが、なかなか難しい」と語る。

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 背景にあるのは医師の不足と偏在だ。

 県によると、人口10万人あたりの医師数は、203・3人(2018年)と全国で6番目に少ない。

 診療科別では、小児科東北地方で最も少なく、産婦人科・産科も下から2番目。しかも、分娩ができる医療機関は青森、弘前、八戸の3市に集中している。

 課題解決のため、国は08年度から医学部の定員数を増やしてきた。さらに18年に医療法を改正。地元で一定期間働くことを条件とする「地域枠」で入学した医学部生に、卒業後9年間は同じ都道府県内の医療機関で働き、うち4年間は医師が少ない地域での勤務を条件とする指針を示した。

 弘前大も医学部医学科の定員112人(学士編入を除く)のうち、半数以上の62人を地域枠にしている。

 厚生労働省の担当者は「4~5年すれば効果が出てくる可能性がある。医師の定着には働く環境も影響しており、すぐに改善するのは難しい」と話す。

 さらに、国は分娩できる医療機関の整備費用の半分を補助する事業を設けているが、県内では活用されたケースはないという。

 県医療薬務課の担当者は「人口が減少する地域で開業しても、患者数が少なく、経営を維持するのは難しい。そもそも産科医のなり手も少なく、それ以前の状況だ」と話す。

 地域医療に詳しい城西大の伊関友伸教授(行政学)は「大学病院だけでなく、青森市弘前市八戸市の国公立病院の人員を拡充し、医師の少ない地域への派遣を進めるべきだ。受け入れ先の病院も老朽化した建物を建て替えるなど、若い医師が働きやすい環境を整えることも必要だ」と指摘する。(安田琢典、土肥修一)

     ◇

 〈医師の不足と偏在〉 県内の人口10万人あたりの医師数は、二次医療圏別でみると、弘前大病院のある津軽地域305・4人、県立中央病院(青森市)のある青森地域221・0人と、県平均より高い。一方、下北(138・8人)、西北五(131・8人)、上十三(125・1人)の3地域では少なく、都市部に偏っていることがわかる。

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