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ルイサダ先生は抱きしめてくれた コンクール後の角野隼斗さんに聞く

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編集委員・吉田純子
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 ユーチューブでも活躍するピアニストの角野隼斗(すみのはやと)さん(26)は、ワルシャワでのショパン国際ピアノコンクールショパンコンクール)の第3次予選を終えたあと、恩師のジャンマルク・ルイサダさんのいるパリに発ちました。現在パリにいる角野さんがオンラインで単独取材に応じ、ルイサダさんのこと、いまの思いなどを語ってくれました。

 ――パリにはいつ、入ったのですか。

 3次が終わったあと、ファイナルの1日目だけ聴いて、パリに来ました。

 ――ルイサダ先生に会いにこられたんですね。角野さんにとって、どういう存在なのですか。

 フィーリングがすごく合うなと思っています。ショパンの曲を教えてほしいというだけじゃなくて、もっともっと、彼の音楽を知りたい。そう思える先生です。先生も、僕のユーチューブを面白がって見てくださっているらしいです。

 ――ルイサダ先生のことを知ったきっかけは。

 3年前、パリに留学していたとき、初めてルイサダ先生のリサイタルを聴いたんです。ちょうど共通の知り合いがいて、つないでいただくことができました。

 ――リサイタルの時、どんな印象を。

 プログラムはモーツァルトとシューベルトのソナタ、アンコールがショパンのマズルカの作品17の4でした。音の柔らかさ、弱音のきれいさ。特にアンコールのマズルカには本当に感銘を受けました。

 ――レッスンは、どんな感じなのですか。

 そうですね、特徴的だと思うのは、音の出し方、つまり、どういうサウンドをつくるかということに対しての教え方ですね。指使いとか、腕の使い方とか、バリエーションがものすごく多くて。一見とっぴに思えることでも、言われてやってみると、あ、なるほど、と。例えば、あるワルツの曲で、右手で弾く旋律の一番高い音を、普通は5の指(小指)で弾くのに、先生はわざわざ、2(人さし指)、4(薬指)、1(親指)とくぐらせて、1の指で弾いたりするんです。なんで、そんなわざわざミスりそうなことをするんだろうと思うんですが、でも、弾いてみると、彼の音になるんですよね。手の使い方でも、「空手」とか。

 ――えっ、空手?

 左手でバス(低音)を、深い音で弾きたいという時は、手をチョップに近い形にすればいい、とか。そういう比喩をたくさん使うんです。

 ――具体的……ですね。

 ですね。レッスンって言ってもいろいろあると思うんです。客観的に指示して下さる人と、自分の音楽を信じて信じて、どうしてもそれを伝えたい、っていう人がいて。で、ルイサダ先生は圧倒的に後者なんですよね。別に、すべてを言ったとおりにしなくても怒らないんですけど、絶対こうだからっていうのをとにかく伝えたい、っていう強い意志を感じるというか。

フィーリングがすごく合うというルイサダ先生と角野さん。記事後半では、今回のコンクール挑戦を通じて感じたという先生の愛情について、たっぷり語ります。

映画が好きな先生、小津作品を例に教えてくれたこと

 あと、ルイサダ先生は映画が本当に好きなんです。生徒たちを呼んで、みんなで昔の映画を見るみたいなことを、2、3週間に1度くらい自宅でやってたんです。僕は1、2回くらいしか行けなかったけど。

 ――私がご自宅にうかがった…

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