第23回「鉄のまち」働き手の支持はどこへ 立憲候補支援の労組、どう動く

2021衆院選

西川祥一
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 北海道苫小牧市室蘭市などを抱える北海道9区。「鉄のまち」室蘭には日本製鉄などが立地し、苫小牧にはトヨタ自動車が「北の生産拠点」とうたう部品製造のトヨタ自動車北海道がある。衆院選では、道内有数の「ものづくり地帯」で働く人々の支持をどう取り込むかがカギになる。

 22日朝、室蘭市の「日本製鋼所M&E室蘭製作所」(日鋼室蘭)の工場正門前で、立憲民主前職の山岡達丸氏(42)が、車で出勤する従業員に手を振って支持を訴えた。推薦する日鋼室蘭労組幹部も付き添った。

選挙区を歩く@北海道

 選挙区を歩く@北海道  衆院選が公示され、道内各地で激しい選挙戦が展開されています。北海道の各選挙区で問われる政策課題や選挙戦の状況を追います。今回は道9区を歩きます(随時掲載します。候補者の年齢は投開票日現在)

 日鋼室蘭は原発心臓部の原子炉圧力容器の世界的メーカーとして知られ、「室蘭が止まると、世界の原発建設が止まる」といわれた。福島第一原発事故後、原発の新増設は進まず、水素エネルギーなどの新分野に挑戦している。原発政策と、その影響を受ける将来の雇用は組合員の大きな関心事だ。

 原発政策を巡っては、総選挙を前に山岡氏が所属する立憲と労働組合の中央組織・連合の間で対立があった。立憲の党綱領の「原発ゼロ」に、原発関連業界の労組を抱える連合が反発。立憲の衆院選公約では「原発の新増設は認めない」としたが、「原発ゼロ」の文言は使われなかった。

 山岡氏は前回衆院選で希望から立ち、その後国民民主を経て立憲へ合流した。連合は立憲を支援しているが、日鋼室蘭労組は自動的に山岡氏の推薦を決めたわけではない。労組に足しげく通い、新エネルギー関連で国会質問を重ねた山岡氏の実績を買ったといい、「立憲だからではなく、山岡氏個人を応援する」(労組幹部)という。

 9月、山岡氏は日鋼室蘭労組の定期大会のあいさつで、脱炭素政策を念頭に「政治が産業を守り、技術向上への議論が必要」と訴えたが、原発には触れなかった。

 道内の製造業で最大の従業員数約3400人を抱えるトヨタ自動車北海道の労働組合も、山岡氏を支援する。ただ、その支援がこれまでの衆院選と同様かは見通せない。トヨタグループの労組は複雑な事情を抱えているからだ。

 自動車の電動化が進むなか、トヨタでは労使一体となってカーボンニュートラル(脱炭素、CN)対応を進めている。全トヨタ労働組合連合会が、CN関係の行政要望で自公の議員と協調する場面も出ている。道内でも従来通りの運動員を確保して立憲候補を支援するのは「難しいのでは」(関係者)との声もある。

 野党共闘も労組との協調に影を落とす。道内では立憲と共産などとの野党共闘体制が選挙直前に決まり、9区では共産が候補者を取り下げて山岡氏支援に回る。ただ、共産への不信感を持つ労組もあり、山岡氏は直接労組幹部に電話をするなどして理解を得たという。

 一方、山岡氏と対決する自民前職の堀井学氏(49)は、原発政策で「再稼働推進」を明確に打ち出し、支持拡大を狙っている。

 22日夕、苫小牧市の選挙事務所前。堀井氏はこの日、道内入りした岸田文雄首相を迎えた演説会で、停止が続いている北海道電力泊原発の再稼働を念頭に「なぜ私が、原発の再稼働を争点にしたか。高い電気料金を続けていては企業は厳しい経営になり、撤退が起こる」と指摘。「これ以上のふるさとの人口減少、衰退は防ぎたい。福島の原発事故で再稼働はなかなか言えなかったが、必要なものは必要と訴えていくことにした」と主張した。

 堀井氏はこの日の演説で半分近くの時間を原発再稼働問題に割き、電気料金引き下げが企業の利益、そして家計のメリットに直結すると強調した。

 堀井氏は街頭などで、カジノを含む統合型リゾート(IR)の苫小牧市への誘致も公約に掲げ、企業を回って支援を訴えている。

 9区での与野党候補の一騎打ちは初めてだ。連合北海道の幹部がいう。「共産も加わった野党共闘は、エネルギー政策外交政策などで矛盾を抱えている。自民党に対抗する政党の大きな枠組みがどうなるのか。有権者が判断することになる」(西川祥一)

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