第8回無党派層が候補者発見 大統領選のプロが語る「朝日・東大共同調査」

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聞き手・井上昇
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 2003年以来、国政選挙の度に実施してきた「朝日・東大共同調査」。全ての候補者を対象に、政策的な立場を問う意義とはどこにあるのか。今回の調査の注目点は。米国大統領選挙にスタッフとして参加した経験も持つ明治大学の海野素央(うんのもとお)教授(異文化間コミュニケーション)に聞きました。

 ――「朝日・東大調査」は13回目になります。調査をどう見ていますか。

 私は2008年以降、米国大統領選挙で民主党陣営のスタッフとして各家庭への「戸別訪問」をしてきました。米国の選挙では、運動員が各家庭を訪ねて候補者の政策的な立場を説明して回るんです。だから、候補者が政策上の立場を明確にすることは米国では当たり前。というより、政策的立場を明らかにしないと勝負ができない。

 一方、日本は選挙期間中の戸別訪問は禁止されていて、有権者は候補者の立場がわかりづらい。朝日・東大調査は、候補者の政策上の立場を明確にするという意味で、戸別訪問を補う効果がありますよね。

 調査結果は、主に無党派層の方が自分の考えに近い候補を発見するために活用すると思います。また、そうした候補者が見つかれば実際に票を入れたくなる。有権者の政治への意識を高める教育的な側面や投票を促す効果も持ち、とても意義があると思っています。

 ――そもそもどうして米国大統領選に参加するようになったのですか。

 私の専門は「異文化間コミュニケーション」です。母親が白人で父親がアフリカにルーツを持つオバマ氏を見た時に、非常に多様性があると感じ、「オバマ氏を通じて異文化の研究を出来る」と思ったのが最初のきっかけです。

 08年に米国に行って以来、4度の大統領選で全て民主党陣営にスタッフとして参加し、合計約8千軒の戸別訪問をしました。でも最初は選挙の研究ではなく、異文化の研究で行ったんです。

 ――米国にも、似たような調査はありますか。

 米国では上院下院の連邦議会選挙が2年ごとにありますが、全国の全候補者を対象にした大規模な調査は、少なくとも私は見たことがありません。

 ただし、4年に1度行われる大統領選では、候補者の政策を比較したり、自身の考えと近い候補者をマッチングしたりするサイトが多くあります。これらは、明確な支持政党を持つ人はあまり使わず、無党派層が積極的に使います。朝日・東大調査を見た時に、まず私はこれらのサイトを思い出しました。

 ――今回の調査で、注目した質問や結果は。

 私が最も注目したのは、「経済競争力」と「格差の是正」のどちらを重視するかを問う質問です。これは、富裕層や大企業を重視する安倍・菅政権下での経済政策を続けるか、岸田文雄首相が目指す「分配」の方向にかじを切るかの質問と言い換えることができます。

 自民党候補者の回答は、格差の是正重視より経済競争力重視の方が多いです。つまり、党内には競争力重視の安倍晋三元首相的な考えが根付いて残っているということ。これを改革出来ないと、岸田首相は「分配」は実現できません。岸田政権にさっそく分厚い壁が立ちはだかっていると数字から読み取れます。

 ――他に注目したポイントは。

 各候補者の「人柄」について聞いた質問にも注目しました。候補者は、自分のイメージを当然気にします。だから、「他の候補はどう答えているか」も含めて、候補者自身が一番気にする質問でしょう。

 ただし、回答を額面通りに受…

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