「ノン」の勇気、なければ「茶色の朝」訪れる ベストセラー作者語る
全体主義へと向かう社会を風刺した寓話(ぐうわ)「茶色の朝」に基づくオペラ「シャルリー~茶色の朝」が今月、横浜で日本初演される。原作は1998年の短編だが、コロナ禍という新たな分断の時代をも鋭くあぶり出し、再び注目を集めている。原作者でフランスの心理学者のフランク・パブロフに、作品に託した思いをリモートで聞いた。
「今日の世界は、小さいコミュニティーの中に閉じてしまう傾向がある。小さいコミュニティーは、往々にして他のコミュニティーに耳を傾けようとしない。各人が、何とかして自分の信じるものを貫こうと、自らの思いを他の人に押しつけようとする。そういった感覚が、口当たりのいいポピュリズムの力を借りて増殖している」
パブロフは、そんな現代社会への問題意識を「茶色の朝」に預けたと語る。
「世界は複雑で、簡単に答えが出ない。だからこそ、豊かで素晴らしい。複雑さを失った世界では、人間は誰もが『道化』になってしまう。複雑な質問に、誰もがすぐに答えを出してしまう今のテレビは、危険の兆候のひとつだと思います」
茶色以外の犬は始末せよ。そんな命令が国から下されたのが物語の発端となる。メディアも「茶色新報」や「茶色ラジオ」だけになる。物事を深く考えなければ、茶色の世界に守られ、そこそこ快適に暮らしていけるため、やがて誰もが自主的に茶色を選ぶようになる。そして、主人公の方を向いていた銃口が百八十度回転し、観客である私たちに突きつけられるかのような衝撃のエンディングが訪れる。
短く読みやすい寓話形式にし…
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