新型コロナウイルスの「第6波」が懸念される中、治療薬の選択肢が増えてきた。それぞれどんな特徴があるのか。
国内で認められている新型コロナウイルス感染症の治療薬は現在、5種類ある。
感染し、せきや発熱といった症状が出てしばらくは、体内でウイルスが増殖する。この時期は、抗ウイルス薬が効く。
国内初となったのが、昨年5月に特例承認された抗ウイルス薬レムデシビル(商品名ベクルリー)。エボラ出血熱向けに開発されたもので、対象は当初、重症者を原則としていたが、今年1月に添付文書が改訂され、コロナ肺炎の患者全般へと対象が広がった。ただ、海外の臨床試験の結果からは、人工呼吸が必要になるなどの重症者には効果が期待できない可能性が高いことがわかってきている。
酸素吸入が必要でなく、血中の酸素飽和度が93~96%の中等症Ⅰの患者から幅広く使われている。ただ、腎臓や肝臓の機能が落ちている人への使用には注意が必要だ。
新型コロナは発症からしばらくたつと、炎症反応が主になり、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)など免疫反応の異常がでる。この時期の患者には抗炎症薬や免疫抑制薬が有効になる。
二つ目のコロナ治療薬となったのが、ステロイド薬デキサメタゾン(デカドロン)。過剰な免疫が臓器に障害を与える反応を抑えるはたらきがある。
もともと重症感染症向けに承認されていて、昨年7月にコロナ治療薬に位置づけられた。酸素吸入が必要で酸素飽和度93%以下の中等症Ⅱと、人工呼吸器を着けるなどの重症者を対象とする。
デキサメタゾンは点滴と口から飲むタイプがある。今夏の「第5波」では入院できない中等症患者が増え、自宅療養者に広く使われるようになったこともあり、入手が難しくなった。また、軽症や中等症Ⅰの段階で使うと、かえって病状が悪くなることがあり、使うタイミングが重要だ。肥満の患者らには、使う量の検討が必要になる。
三つ目の薬として今年4月に承認されたのが、バリシチニブ(オルミエント)で、炎症を抑えるはたらきがある。もともとは関節リウマチやアトピー性皮膚炎の薬で、中等症Ⅱや重症者を対象とする。飲み薬でレムデシビルと併用する。
病院では、まずレムデシビルやデキサメタゾンを使い、改善しない場合にバリシチニブを加えるといった使い方がされている。
四つ目の薬として今年7月、軽症者や中等症患者向けの点滴薬が特例承認された。2種類の中和抗体を組み合わせた抗体カクテル療法と呼ばれるカシリビマブ・イムデビマブ(ロナプリーブ)で、ウイルスが細胞に感染するのを妨げる。
高齢者や持病があるなど重症化リスクの高い患者が対象となる。当初は入院患者に限っていたが、幅広く使えるようにしてほしいとの要望を受け、医療機関での日帰り治療が可能となり、自宅療養中の患者に往診で使うことも認められた。
五つ目の薬となったのが、中和抗体薬のソトロビマブ(ゼビュディ)。9月に特例承認された。こちらの使用は10月下旬現在、入院患者に限られている。
さらに、軽症者用で飲むタイプの抗ウイルス薬の開発が進む。自宅でも使いやすい飲み薬が実用化されれば、コロナ治療が新しい段階に進むと待ち望まれている。(編集委員・辻外記子)
■軽症者向け飲み薬、近づく実…