気候変動で中国、ロシアと新たな火種も? 米政府が初めて報告書

ワシントン=高野遼
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 気候変動が安全保障に与える影響を分析して今後の政策に生かすため、米政府は21日、情報機関や国防総省などによる初めての本格的な報告書を公表した。気候変動の影響が増すと、対応策をめぐって地政学的な緊張が高まることで「米国の安全保障へのリスクが増大する」と分析している。

 報告書は、温暖化による海面上昇などが中国に有利に働く可能性があるほか、干ばつなどで南アジアやアフリカ諸国が不安定化する恐れがあると指摘した。

 近年は気候変動による影響を環境問題としてだけでなく、安全保障に関わる問題としてとらえる考え方が広まっている。環境対策に後ろ向きだったトランプ前政権から一転、バイデン政権は安全保障・外交政策において気候変動を重点課題と位置づける。

 今月末からは、英国で国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)が開かれ、バイデン氏も出席する予定。報告書の発表で、米政府の取り組みを強調する狙いもあるとみられる。

 国家情報長官室の報告書は、気候変動の影響により各地で地政学的な火種が生まれると予測した。焦点の一つが北極海をめぐる競争だ。温暖化により北極海の氷が減少し、航路が開けたことでロシアや中国などとの競争が増すと分析。経済的な競争はもちろん、軍事活動も増えると予測した。

 干ばつや洪水が頻繁に起きることで各地で水源をめぐる争いが生まれ、海面上昇により移民・難民が増えるとも予測。気候変動による情勢の不安定化が懸念される国としてアフガニスタンパキスタン北朝鮮など11カ国を挙げた。

 一方、国防総省の報告書は、軍事的な観点から気候変動の影響を分析した。グアムやマーシャル諸島など太平洋の軍事拠点が海面上昇などの被害を受けやすく、中国がその状況に乗じて影響力を増す可能性を指摘。オースティン国防長官は「気候変動は戦略的展望を変え、安全保障環境を形作り、米国や世界各国に複雑な脅威をもたらす」との声明を出した。

 このほか、国土安全保障省や国家安全保障会議(NSC)も報告書を発表。気候変動が移民に与える影響などについて分析した。(ワシントン=高野遼)