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保健所介さず「コロナ患者にはまず医療を」 「第6波」に向け転換期

有料会員記事新型コロナウイルス

聞き手・阿部彰芳、編集委員・辻外記子
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 新型コロナウイルスの「第5波」で、東京都では空前の感染爆発が起きた。自宅でも亡くなる人が相次ぎ、特定の病院ばかりがコロナを診る体制に限界が見えた。「第6波」も懸念される中、これからの医療はどうあるべきか。東京都モニタリング会議にも参加する、国立国際医療研究センター病院の大曲貴夫・国際感染症センター長に聞いた。

――医療現場からみて、第5波はどんな問題がありましたか。

 当初はある意味、落ち着いていました。中等症の人が入院はしてきますが、早い段階で治療ができれば確実によくなっていく。

 中等症以上の患者さんに対する治療がほぼ確立されていました。これは大きい。ちゃんと治療できる病気になったなという感覚を現場のみんなが強く持っていました。

 しかし、8月になると、発症から入院までの時間がどんどん延びて、若い人でも入院時には症状がすごく重くなっている。病気としてはもうできあがってしまっているわけです。そうなると、治療してもなかなか回復しません。

 回復しない患者さんは、入院し続けます。新たに入院患者を受けられなくなり、重症者の割合もどんどん上がる。一方、自宅にいて本当は入院が必要な患者さんの入院待ちがさらに延び、その間に状態が悪くなる。

 まさに悪循環です。

 お盆前後は本当に厳しい状況でした。

 陽性者を運ぶ救急車の行き場がなく、私たちの病院も、コロナ用ベッドがいっぱいで受け入れ要請を断っていました。

 でも結局、救急外来のベッドが空いている限り、受けることになりました。救急外来で治療は始めますが、入院できる環境ではありません。そこで、救急外来の医師たちや当院の入院調整担当の医師たちが周りの病院に片っ端から電話して、なんとか翌日ぐらいまでに入院先を確保する。そんな状況が2、3週間続きました。

――東京都への緊急事態宣言は7月12日に出ました。タイミングとしては比較的早かったのに、なぜこのような状況になったのでしょうか。

 7月上旬の段階で、感染が相当広がっていたんだと思います。

 この病気は、感染から発症までに時間差があり、感染したすべての人が検査を受けているわけでもありません。1日あたりの新規感染者数は、2週間ほど前の感染状況を反映しているわけです。

 ただ、危険なシグナルはありました。僕が、まずいと思ったのは6月下旬です。

「まずい」と思った6月下旬

 まず、20代の新規陽性者が急に増えてきました。コロナの流行は、20代から始まり、30代、40代と感染者が増えていくのが一般的です。

 さらに、40~50代の重症者数が急に伸びた。重症化する人は、比率で言えばわずかです。その背景には軽症、無症状の40~50代がたくさんいて、20~30代の感染者は、なおさら多いはずです。

 厚生労働省の会議などで、「これは相当に広がっているはずだから、注意した方がいい」と発言はしてきました。都のモニタリング会議でも、危険なシグナルを発信してきたつもりです。

 でも、リスク情報をいくら伝えても、明らかに人々の行動の変化にはつながっていなかった。

 当時はまだ、都内の1日の新規陽性者数が、「5千人」などと恐ろしい数字でなかった影響もあると思います。むしろ、みんなの気持ちがバラバラになるような情報が多かった。

 僕らとしては、リスクコミュニケーションを頑張ることで、その空気を変えたかったが、やっぱりうまくいきませんでした。

――東京の第5波では、入院ベッドが不足し、入院できなかった患者の対応も後手になりました。

 大きな波が来たとき、病院の…

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