「日本で実物見たいのに」嘆く研究者 ビザ出さぬ日本、留学生9割減

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中井大助=ニューヨーク、河崎優子
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 日本が、新型コロナウイルス対策を理由に留学生ビザの大半の発行を止め、再開のめどもないことに、国内外から懸念が出ている。留学生が日本に渡れないだけでなく、海外での日本研究や、日本からの留学生の受け入れにも影響しかねない状況だ。

 米ハーバード大学院博士課程のリア・ジャスティン・ヒニッチさん(31)は昨春から、研究のために日本へ行く予定だった。奨学金を得て、受け入れ大学や指導教官も決まっていた。だが、新型コロナの影響で断念せざるを得ず、米国にとどまっている。

 研究テーマは、狂歌連と浮世絵師の関係。インターネットを使って絵画を調べるなどしているが、日本の美術館の多くは所蔵作品をデジタル化しておらず、限界がある。「日本画の研究では実物を見ながら、どのような記載があるかを見なければならない」と語る。

 2020年は、生活費を得るために働いた。今年は金銭的な支援を得ることができ、時間を取り戻そうと研究を進めているが、「日本にいたら」という思いがつきない。「自分では見落としていることが、日本の専門家から指導を受ければ分かると思う。同じ分野の研究仲間との交流もない」

 日本人女性と結婚しているが、日本が同性婚を認めていないため、配偶者ビザを申請することもできない。「精いっぱいやっている」と自分に言い聞かせるが、展望のなさにストレスがたまる。

 同じくハーバード大学院博士課程で日本史を研究するジョン・ハヤシさん(30)は19年秋から、京都大に留学をしていた。1年間の予定だったが、20年春に新型コロナが広がり、米国務省から帰国するよう求められ、奨学金も打ち切られた。

 それ以来、戻る機会をうかがうが、見通しは立たない。「日本にいる間に資料を集められただけ運が良かったが、研究計画は変えざるを得ない」という。

 ハヤシさんの祖父は日系2世。ただ、イリノイ州で育ち、子どものころは日本文化との接点もなかった。姉が高校生の時、日本に留学したことを機に興味がわき、自身も続いた。「育った環境との違いや、日本語の複雑さに引きつけられた。『自分』を指す言葉がこれほどたくさんあるのが驚きだった」と話す。

 大学に入ってからも日本語を学び、卒業してからは外国の若者を日本に招くJETプログラムの一員として三重県松阪市で2年間過ごした。今後も日本研究に残りたいと思っているが、不透明感が増している。「この数年間が研究にどのように影響し、将来にかかわるのか、多くの人が不安を抱えている」

 日本に留学をしたくても、行けない人は多い。日本政府は昨秋に留学生ビザの発給をいったん再開したが、今年1月から再び全面的に止めた。国費留学生に限って5月から受け入れを始めたが、コロナ禍前に留学生の96%を占めた私費留学生は門戸が閉ざされている。出入国在留管理庁によると、21年上半期に入国した留学生は7078人で、19年の同時期と比べて約9割の減少だった。

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