コロナ下の部活に新たな気づき 「ズルするところが勝つ」モヤモヤも

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編集委員・中小路徹
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 「生徒たちの声が活気を帯びるようになりました」

 そう話すのは、東京都立つばさ総合高で生徒部主任を務める柴原桂教諭です。同高では13の運動部に、約300人が所属。スポーツ推薦入学の生徒もいます。

 学校の運動部活動は、新型コロナウイルスの影響で中止になったり、制限されたりしてきましたが、今月から原則可能になりました。

 東京都は9月末の緊急事態宣言解除で、部活動の実施について、都県をまたぐ練習試合を控えること以外、ほぼ通常通りに認めました。それまでは、7月9日に「原則中止」とし、公式大会に向けた活動だけが認められていました。8月17日からも「週4日以内」の活動にとどまっていました。

 全国的にも原則中止とした地域があるほか、「1日の練習は1時間半以内」(山梨県)「他校との交流禁止」(島根県)など、感染状況に従って制限されてきました。

 一方、昨年は中止になった全国高校総体、全国高校野球選手権、全国中学校体育大会は無観客で開かれました。ただ、高校総体では24競技の74校が、陽性者や濃厚接触者が確認されたことなどを理由に辞退しました。また、夏の高校野球でも2校が辞退。大会による感染の広がりは否めませんでした。

 感染リスクの中で部活動をどうしたらいいか。バランスは難しいところですが、柴原教諭が顧問を務めるハンドボール部は夏場は大会を控え、密になる接触プレーを避けながら練習しました。「得意なスポーツで活躍することで喜び、成長する。勉強が基本の中、部活も重要な学校生活の一環ですので」

 やはり大会前に練習した陸上部顧問の木村宏幸教諭は「走る時、縦に並ぶと前の走者の飛沫(ひまつ)が後ろにかかる恐れがあるので、横並びにした」という工夫をしたそうです。去年は集大成の場がなくなった3年生に、「頑張って続けてきたことが社会に出ても確実に力になる」と励ましたものの、「自分も苦しんだ」と明かします。

 木村教諭には活動が制限され、副産物がありました。「部員たちが自分で練習方法や意味を考えられるよう、トレーニングの仕方や、体幹とは何か、といった理論を示す動画をつくり、指導スキルが上がりました」

 新たな気づきも生まれたといいます。「けがをする部員が減りました。また、限られた大会にしか出られなくても、記録が良くなった。今までが練習のしすぎだったのかもしれません」

 複雑な心情を抱える部活動の指導者たちもいます。

 「ズルをするところが勝つ。正々堂々が通じない」

 緊急事態宣言やまん延防止等…

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