増える外国人労働者支えるためには 日本語教育など支援策競う各党

藤田大道
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 茨城県内で暮らす外国人が増え続けている。2012年に5万人だったのが、19年には7万人を超えた。農業が盛んな茨城では、その2割を占める技能実習生が貴重な労働力となっている。だが、生活を支える日本語教育などの体制づくりは道半ばだ。衆院選でも、主要政党は共生社会の実現に向けたさまざまな公約を打ち出している。(藤田大道)

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 14日朝、小美玉市の畜産農家では、インドネシア人の男性が立ち乗りの農機を運転し、ニワトリにエサを与えていた。

 この農家では約15年前から東南アジア出身の若い外国人を受け入れ、現在は4人の技能実習生が働く。

 エサやり作業を見守っていた経営者の男性(51)は「真面目に働いてくれてとても助かるよ」と目を細める。動物が相手の畜産業は、年間を通じて休みづらいが、若い技能実習生の働きのおかげで、負担は減ったと感じるという。

 県によると、20年10月末で県内の外国人労働者は3万9479人。全国で11番目に多い。15年の国勢調査では、県内で働く農業や林業の労働者のうち、約20人に1人は外国人の計算だ。

 男性は、外国人を受け入れ始める前は、日本人の主婦などのパート従業員を苦労して集めていたという。「もう日本人を集めるのは無理だろう。外国人がいなくなれば事業を小さくするしかない」

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 技能実習制度は1993年、日本で学んだ知識や技能を母国で生かしてもらう目的で始まった。実際には人手不足の業界で安価な労働力として受け入れられるケースが大半だ。

 少子高齢化が進み人手不足が深刻になる中、19年施行の改正出入国管理法で、国は外国人を正式な労働者として受け入れる方針に転換した。これにあわせ、外国人と共生するための支援策もまとめた。行政サービスの多言語化や外国人が生活全般の相談ができる窓口設置のほか、日本語教育も大きな柱となった。

 冒頭の技能実習生らは、JR羽鳥駅近くの市の施設で開かれる日本語教室「サバイディ」に週に1回通う。日本人のボランティアが運営し、ほぼマンツーマンで文法の勉強や会話の練習をする。

 ベトナム人のミンさん(24)は日本語能力試験の勉強をしていた。通い始めて3年。「親戚もいない日本で、サバイディには自分を気にかけてくれる人がいる。居心地がいい」

 サバイディは95年の運営開始以来、これまで700人以上の外国人を受け入れてきた。現在は、技能実習生や外国語指導助手(ALT)など約20人の生徒と、40~70代の11人のボランティアがいる。

 ただ、後継者探しという課題を抱える。平均すれば1年に1人ほど「先生」は増えるが、結婚や転勤などで来られなくなる人も多いという。サバイディを立ち上げ、今も代表を務める女性(72)は「ボランティアなので心と時間に余裕がある人でないと長く続けるのは難しい」と話す。

 県内の8市町は日本語教室がない「空白地域」となっている。外国人が少ない県央・県北地域が中心で、日本語教室の設立に向けた取り組みが進む。

 県国際交流協会は城里町茨城町などの住民を対象に、10月末から多文化共生をテーマにした全5回の講座を開く。日本語教室の運営に関心のある人の掘り起こしがねらいだが、城里町の担当者は「ボランティアなので強制はできない。熱意のある人が現れるといいのですが……」と不安もこぼす。

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 19年に新設された在留資格「特定技能」では、一部の業種の人に家族帯同を認めた。今後も外国人の増加が見込まれる。どう環境を整えていくべきなのか。

 衆院選では、自民党は一元的な相談窓口の設置、外国人を公立学校で受け入れる体制の充実を掲げる。立憲民主党多文化共生社会実現のための基本法制定や外国人の子どもたちの教育の保障を訴え、公明党日本語教育の充実を唱える。共産党は人権が守られていないとして、技能実習制度は廃止すべきだという立場だ。

 茨城大学人文社会科学部の横溝環(たまき)准教授(多文化関係学)は「外国人は同じ社会で生きる生活者だという理解がもっと広く浸透する必要がある」。日本語教室のボランティアなど外国人への関心の高い人がいる一方、無意識な差別をする人も根強くいると指摘する。

 技能実習生として働く間に子どもが生まれて受け入れ企業などが対応に追われるケースもあり、「外国人の増加に対して、生活者として受け入れるための制度づくりも追いついていない」と話す。