コロナ禍で遊び場や公共施設の利用が制限され、子どもとの外出がままならない親が多い。国は「居場所」と期待する子ども食堂への緊急支援策を打ち出した。ただ、窓口となる自治体の取り組みには開きがあり、子育て環境に格差が生じている。
10月中旬。群馬県安中市内にある「子どもワクワク食堂」が、ハロウィーンのイベントを開いた。
「自分の好きなデザインのTシャツを作りましょう」。仮装したスタッフが、集まった子どもや保護者ら約30人に呼びかけた。白いシャツに、子どもたちがマジックでキャラクターを描いたり、ハート形のシールを貼ったり。子ども同士で遊び、約3時間、明るい声が部屋に響いた。
市内の40代のシングルマザーは「コロナ禍で行き場を失った」と話す。家で過ごすことが多く、ストレスのせいか、子どもが大声を出したり暴れたりしたという。「子育ての悩みを話す相手がいるだけで、気持ちが楽になる」
参加する子どもの家庭は、様々だ。ひとり親、一人で子育てを切り盛りする「ワンオペ育児」の母親も。5年前から子ども食堂を運営する今村井子さんは「仕事、子育てに追われる親たちもサポートしたい」と語る。
安中市は2019年4月に「子ども食堂連絡会議」を設置。子ども食堂の運営団体と定期的に意見交換をしている。市は子ども食堂9団体でつくる協議会に、子ども食堂開催の広報費や、主催者が加入する保険費用を補助している。今村さんは「会議には市の子育てや福祉関係の部署が入り、官民共同で子ども支援に取り組んでいる」という。
しかし、積極的な自治体ばかりではない。厚労省研究班の昨年度の調査によると、全国約5千カ所の子ども食堂への自治体の支援状況は、開設・運営支援(相談窓口)を実施しているのは約2割、補助金を出しているのは約3割だった。
内閣府は、コロナ禍で子どもが社会的に孤立しないように「地域子供の未来応援交付金」の支援策を拡充。自治体が、子ども食堂など居場所づくり事業をNPOなどに委託する時に、補助金を交付する。だが、活用する自治体は9月現在で全国の約2割。群馬県内では、館林市のみだ。
広がらない一因について、県は「自治体が子ども食堂を設置し、NPOなどに委託する点」を挙げる。内閣府の担当者は「コロナ禍の緊急支援として、補助率もかさ上げしている。子どもの孤立対策につなげてほしい」と説明する。ただ、施策の根拠となる法令はなく、年度ごとに確保できた予算に応じた内容になるという。
子どもワクワク食堂を運営する今村さんは、全国のネットワーク組織にも参加し、各地の行政支援の情報も得ている。「食材提供してくださる方は増えたが、会場費や水光熱費は運営者の持ち出しが多く、負担が大きい。ボランティアに頼っているのが実情。取り組みの継続には、行政の運営支援の拡充が欠かせない」と話している。(角津栄一)
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