国境沿いそびえる5mの鋼 移民を阻む「壁」次々、EUの本音と苦慮

アフガニスタン情勢

ブリュッセル=疋田多揚、青田秀樹
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 アフガニスタンなどから欧州連合(EU)を目指す移民・難民の流れを遮ろうと、域外と接するギリシャやポーランドなどが、国境に壁や鉄条網を設けている。賛同する加盟国は22日のEU首脳会議で建設費補助を要請。人権尊重か「難民危機」回避か。EUは対応に苦慮している。(ブリュッセル=疋田多揚、青田秀樹)

移民流入、恐れる国々

 ギリシャは8月下旬、トルコとの国境沿いに長さ40キロの鋼の壁を完成させた。高さ5メートル。てっぺんには鉄条網が据えられた。ドローンやレーダーなども備え、壁から10キロ先まで監視の目を光らせる。完成に先立つ同17日、ギリシャの移民担当相は「アフガンから逃れる何百万人もの人々を通すのは無理だ。ギリシャは欧州の玄関になれない」と強調。今月10日には現場の国境警備隊を250人増強すると内相が明らかにした。

 ギリシャは2015年、シリアなどから100万人以上が欧州に押し寄せた「難民危機」で、主要ルートの一つになった。アフガニスタンで今年8月に政権が崩壊した今回は、「難民がこれ以上欧州に到着するのを避けたい」(ミツォタキス首相)という姿勢を鮮明にしている。

 イラクなどからの移民・難民が急増したリトアニアも8月、壁の建設計画を明らかにした。経由地となっているベラルーシとの国境沿いに総延長500キロを来年9月までに築く。ベラルーシのルカシェンコ大統領が7月、隣国へ不法越境する人々の取り締まりを拒むと明言したためだ。

 ポーランドも今夏、ベラルーシとの国境に鉄条網を設置。フェンスも増設する方針だ。

 ギリシャなど12カ国の内相は今月7日、共同書簡を欧州委員会に送り、壁の建設費をEUが負担するよう求めた。域内への移民・難民の流入を恐れるオーストリアなどの中欧も加わった。

「壁」支援拒むEU

 22日のEU首脳会議。リトアニアのナウセーダ大統領は「我々はフェンスについて議論しなければならない。5千人もの移民があす一斉に国境に押し寄せるかもしれないのだ」と語り、会議に臨んだ。

 だが、EUの行政を担う欧州委員会フォンデアライエン委員長は「鉄条網や壁の費用を負担しないのが欧州委や欧州議会の考えだ」と壁の建設費用負担を拒んだ。人員の派遣や必要な機器への支援はしても、人権を重んじるEUとしては「壁」そのものにお金は出せないからだ。

 とはいえEUも移民・難民の流入を防ぎたいのが本音だ。アフガニスタンシリアから逃れる人々の近隣国での受け入れを、資金面でも支援する方針を打ち出している。

 一方で、EU加盟国への受け入れ議論は進んでいない。このため首脳会議の合意文書には「即座に適切な対応をとるため、資金支援をともなう具体案をまとめるよう欧州委に求める」との項目が盛り込まれた。直前までの文案にはなかったが、首脳間の交渉を踏まえて書き足された。EUとして取り得る代案を示したうえで、国境管理の効率化をはかる。

 欧州は何度も戦禍に包まれ、自らの市民が難民となったこともある。フランスのマクロン大統領は22日、閉幕後の記者会見で「欧州は自由のために戦った人たちを守り、難民を守る原則のもとで築かれた。この価値観を揺るがすことなく、国境を守る必要がある」と述べる一方、「受け入れられなかった移民は、もっと効率的に出身国に送り返さなければならない」として、不法滞在者の国外退去を徹底させる考えも示した。