大島光翔物語(下)
東京・東伏見のダイドードリンコアイスアリーナにその曲が響き始めると、僕の胸がキュッと締め付けられた。
イタリア映画界の巨匠、故フェリーニ監督の映画「道」のメロディー。スケートファンならおなじみのあの名曲に、18歳の若いスケーターが挑戦してみせた。
高橋大輔ワールドに染められた「道」を演じる18歳。その思いは
「最初は暗いイメージから、最後の終盤に向けて明るくなっていく」と彼は言った。
11年前にこの曲を演じた「あの選手」の、審判席に向かって花束を渡すシーンを思い出す。
18歳の彼の場合はキスを投げる。その直後のステップでエッジが氷に引っかかり思わず転倒してしまう。それも含めて、僕の心はじんわりと温かくなった。
それは10月10日の東京選手権のジュニア男子フリーだった。演じたのは大島光翔(こうしょう)(18)=明大。
「この『道』を滑っているのをテレビで見て、その瞬間から虜(とりこ)になって、本当に追いかけるような感じで、ずっと憧れで……。いつかこの曲は絶対に使いたいと思っていて。去年、少しずつ自分も成長していて、いい滑りができるようになってきたので、一番コンディションがいいって思われるこのシーズンで使いたかった」のだという。
その憧れの「あの選手」――。そう。今はアイスダンスで活躍する高橋大輔(35)のことだ。
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2010年バンクーバー五輪…
【視点】やはり、「高橋大輔」という選手が持つ影響力の大きさに改めて感心します。 シングルスケーターとしてのキャリアに区切りをつけ、アイスダンスに転向した高橋選手。多くの人を魅了するという意味で忘れられないのは、昨年のグランプリ(GP)シリーズNH

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