コロナ禍の選挙サンデー 大阪・ミナミでの演説、飲食店にどう響いた

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本多由佳、華野優気、添田樹紀 浅沼愛、新谷千布美
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 衆議院選挙が公示されて初の日曜日となった24日、天王寺やミナミといった繁華街を抱える大阪1区の街頭にも各党の党首や候補者が立った。コロナ禍での選挙サンデーは、大阪にとっては11カ月続いた時短要請の最終日。飲食店主らに、演説はどう響いたのか。

 「大型の経済対策を用意した上でワクチンによる予防、検査態勢、治療の三つを結びつけて、平時の生活を取り戻していく」

 24日夕、大阪市のJR天王寺駅前。自民の岸田文雄総裁が、政府が進めてきた新型コロナ対策などをアピールした。岸田派所属で、1区から立候補した自民前職の大西宏幸氏の応援に入ったのだ。大西氏は「皆さんの命を守れるのは自民の力だ」と訴えた。

 近くにある居酒屋「ろばた焼 新力」を夫と切り盛りする西村美保さん(56)が、夫婦で一緒に演説を聴きに来ていた。

 大阪府の時短要請が解除される25日からは午後9時までだった営業時間を1時間延ばす。「コロナ禍でも頑張れているのは、政治よりも、感染対策を守って応援してくれたお客さんのおかげやと思う」

 国民の声を丁寧に聞き、新しい時代へ努力を続ける――。岸田総裁らの演説を聴き、「具体的にどうしてくれるんやろう。私たちの生活がどうよくなるんか。まだちょっとピンとこなかったですね」と話した。

 同じころ、同駅の裏にある立ち飲み屋「シ酉角刀牛(とりかくとうぎゅう)」では、店長の岡村慎也さん(40)が調理場で忙しく手を動かしていた。

 今春以降、緊急事態宣言などによる休業と時短営業を繰り返してきた。人出の減らない駅前を見ては「これじゃ意味ないやん。すかっとロックダウン都市封鎖)できひんのかな」と思ってきたという。

 25日からは閉店時間を本来の午前0時に戻す。売り上げ増への期待は大きい。

 投票先は決めていないが、判断基準は明確だ。「別にどの党でもええんです。元気のなくなった社会でも、未来に希望を持てるようにしてもらえるなら」

 前回は比例復活した維新前職の井上英孝氏は、大阪市浪速区のスーパー前などに立った。「この1年10カ月、コロナで社会経済が傷んだ。これを回復させ、再開してもらう環境作りをやらなければならない」

 社会経済活動を立て直すにあたり、「一番大事にしているのは改革」と強調。「様々な規制や構造を変え、経済を成長させて、皆さんに果実として分配する」と訴えた。

 大阪1区は前回17年は自民の大西氏、14、12年は維新の井上氏、09年は民主の候補者が当選した激戦区。今回は4候補が立候補している。(本多由佳、華野優気、添田樹紀)

 日本有数の繁華街・ミナミ。コロナ禍の前は外国人観光客でにぎわったが、今はその面影はない。

 夕方、大阪・難波の高島屋大阪店前に立憲の枝野幸男代表が立った。生活困窮者向けの持続化給付金などを政府に求めたことを例に「具体的に提案を積み重ねてきた」と主張。その上で「いつ(感染者数が)リバウンドするかわからない、その危機感が自民と公明にはない」と批判した。応援を受けた立憲新顔、村上賀厚氏は「医療、介護、教育といった基本的サービスの充実が重要だ」と訴えた。

 大阪メトロ・日本橋駅近くで演説していた共産新顔の竹内祥倫氏は「コロナ禍で事業も暮らしもとことん傷んだ。ミナミの居酒屋にも灯(ひ)が戻ってきたが、事業は苦しいままだ」と述べた。立体看板で知られた大阪・新世界のフグ料理店「づぼらや」が閉店したことなどに触れ、「小手先の給付金とか協力金ではやっていけない。最も有効な手立ては消費税の減税だ」と訴えた。

 長引いた時短要請の影響で、「食い倒れの街」は疲弊しきっている。

 ミナミでオーセンティック(正統派)バーを経営する男性(67)は今回の選挙は腰が重いと話す。「本当に大変な時、どの党の議員も現場の話を聞きに来なかったし、力になってくれなかったからね」

 バーの営業時間は本来は午後6時から翌午前1時までだが、緊急事態宣言の度に休業を繰り返した。時短要請の全面解除に期待は高まるが、懸念も消えない。「要請に従わない店は野放しのまま。ワクチンパスポートの実証実験も始まるが、はしご酒の人をどうするかなどがわからず、あまり期待できない。もし第6波が来て、また宣言では意味が無い」

 遠くで演説の声が響く午後5時すぎ、ミナミにあるお好み焼き屋はほぼ満席だった。店長の男性(44)は「投票には行かない」と言い切った。もともと政治には興味がないという。コロナ禍では売り上げが8割減るなど翻弄(ほんろう)され、「それだけに自分でどう立て直すかということばかり考えています」。(浅沼愛、新谷千布美)

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