BTSも読んだベストセラーの著者が語る韓国社会 若者は変わった?

有料会員記事韓国大統領選挙2022

ソウル=鈴木拓也
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 イラストレーターで作家のキム・スヒョンさん(34)は5年前にエッセー「私は私のままで生きることにした」を出版。若者の人生観や悩みをつづり、厳しい競争を強いる韓国社会に一石を投じました。BTSのJUNGKOOKの愛読書としてSNSで広がったこともあり、日韓でベストセラーに。今、韓国でMZ世代と言われる20~30代の価値観は変化しつつあると言います。厳しい受験競争と就職難という二重苦にさらされる若い世代をテーマに考えます。

 キムさんのオフィスは、ソウルで若者に人気の街・弘大(ホンデ)の中心部から少し離れた閑静な住宅街にあります。10月上旬に、その仕事場を訪ねました。

若者が感じる不条理

 ――若者の悩みなどをつづった「私は私のままで生きることにした」は、日本でもベストセラーになりました。韓国で出版されたのは2016年11月。当時は、朴槿恵(パククネ)大統領をめぐる汚職スキャンダルに怒った若者たちが、ソウル中心部で大統領の退陣を求める「ロウソク集会」を続けていました。

 その時期に出版したのは偶然です。だけど、大統領のスキャンダルをめぐる当時の世相が、同世代の共感を得るトリガーになったのは事実だと思います。今もそうですが、韓国の若者は社会の不公正、不条理を強く感じています。

 私が本を書こうとしたきっかけは、就職活動の失敗です。IT業界とファッション業界に関心を持ち、それぞれ大手企業のインターンシップに参加しました。一生懸命に取り組んだけど、結果は2社とも不採用。とてもショックでした。

 有名大学を卒業し、大企業に就職して、相応の人と結婚し、ある程度の所得層が集まる地域にマンションを買う。他の人と同じように、私も親からはそれが韓国での成功と教えられてきました。だから頑張った。

 ルイス・キャロルの小説「鏡の国のアリス」に登場する赤の女王のセリフ、「同じ場所にいようとすれば全力で走る必要がある」ではありませんが、周りの人たちと同じように自分も走り続けるしかないと。それなのに、なんで就職活動がうまくいかなかったのか。

 ある本を読んだら、そういった成功を手にするのは、韓国で5%に過ぎないと書いてありました。では、95%は敗者なの? 私もその中に入るのだろうか、これからどうやって生きていけばいいのか。真剣に悩みました。

 95%の人が「敗者」になってしまう社会構造のほうがおかしい。そう考えました。今後の人生はつらいかもしれない。だけど、私は私を尊重して、自分の考えを大切にして生きよう。その思いを、同じ悩みを抱える人たちに伝えたいと思って書きました。

韓国社会は変わったか

 ――出版から5年。この間、公正な社会の実現や雇用創出を公約に掲げた文在寅(ムンジェイン)大統領が就任し、政権運営に取り組んできました。韓国社会は変化したでしょうか。

 富裕層の子どもが資産だけで…

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