藤井聡太三冠、むずむずと動いた手 木村一基九段「折れてしまった」

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藤井聡太三冠「攻めが細い局面が続いたんですが…」~木村一基九段戦、感想戦ノーカット~【第80期将棋名人戦・B級1組順位戦】=高津祐典撮影
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普段と違う「ぶっきらぼう」な木村

B級1組順位戦5回戦 ▲(先手)藤井聡太三冠(3勝1敗)△(後手)木村一基九段(1勝2敗)

 叡王を奪取して三冠になったばかりの藤井と、王座戦五番勝負を戦っていた木村。勢いのある両者が順位戦で初めて顔を合わせた。過去の対戦成績は藤井の6勝1敗だ。

 9月20日。東京・将棋会館の特別対局室に先に姿を見せたのは藤井だった。木村の着席後、上座の藤井が駒箱を開ける。深く一礼してから王将を手にして、駒を並べ始めた。

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B級1組順位戦で対戦する藤井聡太三冠(左端)と木村一基九段(右端)=2021年9月20日午前、東京都渋谷区の将棋会館、日本将棋連盟提供

 先手の藤井は、今年多用している相懸かりを選んだ。図は8月に永瀬拓矢王座と指した第34期竜王戦挑戦者決定三番勝負第2局と同じ局面。永瀬は△9五同歩と応じたが、木村は△8五桂と跳ねた。攻められた9筋から反撃する狙いだ。

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▲2六歩 △8四歩1 ▲2五歩 △8五歩 ▲7八金 △3二金1 ▲3八銀 △7二銀1 ▲9六歩  △5二玉3 ▲4六歩4 △9四歩6 ▲2四歩7 △同 歩 ▲同 飛  △2三歩16 ▲2八飛  △8六歩 ▲同 歩  △同 飛 ▲7六歩2 △同 飛3 ▲8二歩  △9三桂1 ▲9五歩1=図(指し手の後ろの数字は消費時間〈分〉)

 ノータイムの▲8七金(指了図)を見た木村が考え込む。

 「全部でどれぐらい使ってる?」。記録係に尋ねる口調は、普段とは違ってぶっきらぼうだ。そのまま昼食休憩になった。村瀬信也

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△8五桂3 ▲8一歩成9△同 銀 ▲2五飛  △8四歩8 ▲8七金

持時間各6時間 消費▲23分 △43分

読みの本線になかった手

 藤井は昨年、木村は一昨年に初タイトルを手にした。ただ、そこに至る道のりは全く異なる。藤井は史上最年少の17歳11カ月、木村は史上最年長の46歳3カ月での獲得だった。いずれも、今後数十年は破られないのではと思える快記録だ。

 両者は昨年の王位戦七番勝負で対戦。開幕時点では30歳差で、史上2番目の年齢差対決として話題になった。今回木村が手にしていた扇子は「王位 木村一基」の肩書入りのもの。揮毫(きごう)されていた言葉は「一発逆転」だった。

 木村は昼食休憩の40分を挟む53分の長考で△7九飛成を決断したが、穏やかな△7四飛が有力だった。▲8六歩で先手の桂得が確定するものの、△3四歩▲6八玉△8八角成▲同銀と進めば、△4四角が先手陣をにらむ急所の角打ちとなる。この手が木村の読みの本線になかったようだ。藤井は後日、「先手陣にキズが多く、作戦の成否は難しいと思っていた」と述懐した。

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図は▲8七金まで

 感想戦で木村は、△7九飛成を「暴走でした」と悔やんだ。△7八銀の両取りは厳しいが、相手に飛車を渡すマイナスも大きい。

 ただ、本譜は藤井にとっても…

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