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ジェネリック不正「薬都」を直撃 業界急成長、現場にゆがみ

野田佑介、波多野陽
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 低価格なジェネリック医薬品(後発薬)はこの10年ほど、国の旗振りで普及が進んだ。だが、水面下でメーカーによる法令違反が横行していた。次々と明るみに出た急成長のゆがみが、「薬都」の富山県など北陸を直撃している。

 「状況は日に日に悪化している。そして終わりが見えない」。薬剤師の竹腰利広さんはため息交じりだ。

 富山市郊外にあり、竹腰さんが責任者を務めるチューリップ薬局アリス店では夏以降、後発薬の品薄が深刻だ。扱う薬の8割は後発薬で、その5分の1ほどが不足がちという。

 患者が希望する品がない場合、代替品や他店舗の在庫を探すが、不足品目が多すぎて苦慮する。不急の薬は処方を避けるよう医療機関と調整することすらあるという。

 特に、薬の切り替えを窓口で患者に理解してもらうのが一苦労。竹腰さんは「切り替える薬の効用は保証されているが、コロコロ変わると患者は戸惑う。そもそもなぜ欠品なのかという説明も、情報不足だから分からない」と話した。

 原因は相次いだメーカーの不祥事にある。

 まず、2020年12月、小林化工(福井県あわら市)が製造したジェネリックの皮膚病薬の服用者から健康被害が報告された。同社によると、服用者324人の7割超の245人が健康被害を訴え、死者も出た。国に承認を受けた手順を守らず製造した違反行為がいくつも確認され、福井県から過去最長となる116日間の業務停止命令を受けた。

 同じ頃、業界最大手の一角、日医工(富山市)でも同様の違反行為が見つかった。20年2月、富山県による立ち入り調査で最初の違反が判明。県は調査をさらに進め、翌年3月に発表した。不正は少なくとも10年前から行われていたという。

 その頃、何があったか。

第1次安倍内閣の「骨太方針

 ジェネリックは特許の切れた先発薬と同等の成分や薬効を持ちながら、開発費を抑える分だけ安く供給できる医薬品だ。患者の費用負担や国の医療費を減らすとされている。

 国内では低調だったが、第1次安倍内閣の「骨太方針」でシェアの目標数値が盛り込まれた。厚生労働省によると、先発薬と後発薬がある場合、後発薬が占める割合は11年は4割だったが、20年は8割に迫った。

 小林化工も呼応して拡大した。19年度の売り上げは約370億円で、08年度の4・5倍にのぼった。一方、品質管理を担う人材は不足し、意識は高まっていなかった。

 引責辞任した小林広幸社長は今年4月、「国の施策に応えるべく工場を積極的に建てた。ただ、それに教育や人的なインフラが追いつかなかった」と悔やんだ。19年度の売り上げ約1900億円を誇った日医工の田村友一社長も法令違反を公表した3月、「拡大の中で現場に無理をさせすぎた」と認めた。

出荷再開の見通し立たず

 厚労省の担当者は、後発薬の供給量について、国内で大きく減っているわけではない、と説明。ただ「一部の薬局が困っているのは認識している。最大手の日医工の生産が止まったため、それが戻るまで見通しは立たない」という。

 小林化工の出荷再開見通しは立っていない。日医工の多くの品目も、出荷再開は22年4月以降の予定という。

 チューリップ薬局をチェーン展開するチューリップ調剤薬局事業部の内田陽一課長は供給不足の長期化を覚悟している。「法令違反を許してはならないが、同時にどうすれば安定供給できるのか、政府は考えて欲しい」と求める。

 100以上の製薬会社が集まり、医薬品生産額が6937億円(19年)にのぼる富山県は、急ぎ対策に乗り出した。有識者による部会は、企業に法令順守体制の整備や身の丈に合った経営などを、県には無通告の査察の強化などを求めた。

 その後の査察で、漢方などの北日本製薬(富山県上市町)、配置薬の老舗の広貫堂(富山市)で、手順を守っていない疑いが発覚した。「ジェネリックだから無理をしたのでは」と説明されていた不正の根は、本当はもっと広く、深いのか。まだ見えていない。(野田佑介、波多野陽)