「自然にほれた」 日本一高齢化が進む村に移住

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松田果穂、中村瞬
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 切り立った山々の間に、集落が点在する群馬県南牧村。コンビニも、信号もない。1600人あまりの人口のうち、65歳以上が占める割合(高齢化率)は9月末の時点で66・22%。村民の3分の2が高齢者だ。7年前には民間研究機関から、人口流出が止まらず存続できなくなる「消滅可能性都市」と名指しされた。

 かつてはコンニャクイモの栽培が盛んで、1955年の人口は1万人を超えていた。だが、いまは耕作放棄地や空き家も目立つ。そんな村に魅了され、都心から移住してきた若者がいる。古川拓さん(27)と里紗さん(27)の夫妻だ。

 拓さんは、大学時代に訪れた村の自然環境にほれ込んだ。初めて村に泊まった日に「生まれて初めて、川のせせらぎと小鳥の声で目を覚ましたことが忘れられなかった」。昨年1月に実家のある横浜市から移住。今年3月には林業の会社を立ち上げ、生計を立てている。

 里紗さんは、多忙な都心での生活に違和感を感じ始めていたころ、大学の同級生だった拓さんが村にいることをSNSで知った。田舎暮らしに憧れていたこともあり、昨年11月に引っ越した。拓さんが移住の手助けをした縁で、今年5月に結婚した。

 村も、古川さん夫妻のような若い世代の人々が定住できるような方策を練っている。今年9月には、小中一貫教育を行う義務教育学校を新設する方針を示した。村唯一の小学校の敷地に、新たな校舎を建てる計画で、2024年度の開校をめざしている。

 村の学校は現在、小学校と中学校が1校ずつあり、子どもの数は小学生16人、中学生10人。児童や生徒の数は今後、さらなる減少が見込まれる状況だが、義務教育学校をつくることで校内の活性化を図り、少人数制のきめ細かな指導を売りに村外からの移住を促す狙いがある。小池英明教育長は「小規模校ならではの特色を最大限生かし、子育て世代が増えてくれることに期待したい」と話す。

 里紗さんは村の教育委員を務め、義務教育学校に関する協議にも加わる。「子どもを増やしたり若い人に住んでもらうには、良い学校づくりが欠かせない。南牧村らしさを生かした学校を作りたい」

 ただ、村には高校がない。中学を出た子どもの多くが近隣の市町に通学しているが、路線バスの本数は少なく、親の送り迎えが欠かせない家庭も多いという。オンライン授業を受けるにしても、山間部ではインターネットの環境も不十分だ。里紗さんは「これも一つの教育格差ではないか」と感じる。

 都市部との差は、教育以外の分野にもある。拓さんは「村民が暮らしやすいと感じる環境があれば、自然と人は増えるはず」と思う。国には「緩やかな地方の発展をめざしてほしい」と願っている。(松田果穂、中村瞬)

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