技能実習生の駆け込み寺、大恩寺 ベトナム人住職の思い

黒田早織、丸山ひかり
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 ベトナムから技能実習生として来日したが様々な事情で行き場をなくした人の「駆け込み寺」が、埼玉県本庄市にある。ベトナム人僧侶のティック・タム・チーさん(43)が住職をつとめる大恩寺。寺で一時的に生活してもらい、帰国や仕事探しの支援もする。コロナ禍で仕事や住居を失った人も数多く受け入れてきた。

 10月初旬のある日。境内の炊事場で、チーさんや元技能実習生、留学生らが夕食を囲んだ。メインは米の麺「ブン」に香草や小ナスの酢漬けをのせ、タレであえた混ぜ麺。母国の味だ。

 寺に身を寄せていた男性(23)は今年5月に、県内の実習先の会社から「逃げた」という。

 仕事は建物の解体。記者は寺のスタッフに通訳を頼み、わけを尋ねた。「危ない高所作業や重い物の運搬などが多かった。給料は安く残業代も出なかった」。会社に相談したが冷たく扱われ、ベトナム人への差別的な視線も感じた。

 外国人技能実習制度は日本で働きながら学んだ技術を母国の発展に生かしてもらう目的で1993年に始まった。実習は最長5年。6月時点で実習生は約35万人いて、ベトナム人は約20万人と国別で最多。制度には、人手不足の日本で安価な労働者を確保する手段になっていると批判もある。

 別の男性(35)は3年前に来日し、富山県でとびの仕事についた。だが4カ月後に肺炎にかかり、以前のように働けなくなった。「迷惑がかかる」と悩んだが、失踪することにした。

 実習先の倒産や会社からの不適切な扱いなど、やむをえない事情があると認められた場合は、同じ職種に限って転職できる。だが男性はもう、とびとしては働けないと感じていた。

 失踪後、板金会社で働いたが、実習生の在留資格が切れ「不法滞在」に。警察に逮捕され、今は出入国在留管理庁の収容が一時的に解かれた「仮放免」状態だ。妻子に給料の大半を送金してきた。仮放免では就労できないが「まだ日本にいたい」と静かに話した。

 別の日に出会ったフエンさん(26)という女性の実習生は、流暢(りゅうちょう)な日本語で「実習生という身分には耐えられない」と言った。

 大学卒業後に来日し、上尾市内の自動車部品会社で働きもうすぐ3年。手続きをすればあと2年働けるが、別の在留資格に切り替えて「エンジニア」として自由に働きたいという。

 出入国在留管理庁によると、変更できる在留資格は限られている。でも、フエンさんの思いは切実だ。

 今は単純作業ばかり。様々な仕事に挑んで貢献したいのに、上司は「実習生なんだから言われたことをやっとけ」。実習生の生活をサポートする監理団体からは、病院に行きたくても「我慢して」と言われ、担当者の男性が突然部屋に「見回り」に来た。自分は、圧倒的に弱い立場だと感じる。「懸命に日本語を勉強し働いている私たちにチャンスを下さい」

 住職のチーさんは、日本で亡くなった同胞を供養し、家族に遺灰を届ける活動もしている。自殺した実習生を弔うこともある。

 日本語での意思疎通がうまくいかず人間関係が悪化したり、家族への送金のプレッシャーから働き過ぎたり……。異国で様々な苦難に直面する彼らが労働者として尊重されるよう望む。

 「実習なのにわずかな技術しか学べず、劣悪な環境に置かれる人も多い。日本は少子高齢化で、外国人労働力に頼らざるを得ない。実態に合わせ、制度を変えて欲しい」(黒田早織、丸山ひかり)