井伊家伝来の朱・銀・黒の大胆な刀装、赤備えの一つか

学芸員 古幡昇子〈のりこ〉
[PR]

「滋宝」彦根城博物館収蔵品から 朱漆塗蛭巻鞘大小拵(しゅうるしぬりひるまきさやだいしょうこしらえ)

 【滋賀】色鮮やかな朱漆塗(しゅうるしぬり)の鞘(さや)が印象的な大小一組の刀装(刀の外装)です。鞘は、朱色部分に螺旋(らせん)状の文様が表され、末端には先を巻いた蕨手(わらびて)状の装飾をあしらった銀金具をはめています。柄(つか)は、朱漆を塗った鮫(さめ)の皮を敷いて黒糸を巻き、黒い鐔(つば)をそなえます。全体で朱、銀、黒の3色を大胆に配した構成となっています。

 こうした斬新あるいは豪快なデザインの拵(こしらえ、刀装)は、桃山時代の作品に多く見ることができます。戦国武将の拵を見ると、朱鞘に金の薄板を螺旋状に巻いたものや、竜の文様を大きく金蒔絵(きんまきえ)で描いたものなど、コントラストが効いた意匠が取り入れられています。本作も金こそ用いませんが、当初は銀金具が、今以上に美しく輝き、メリハリのある色彩であったことが想像されます。

 本品は彦根藩井伊家2代の直孝(なおたか、1590~1659)が使ったと伝わり、没後間もない寛文年間(1661~73)の古文書では、「陣拵(じんごしらえ)」と記録されています。実際に戦場で用いていたかは慎重な判断を要するものの、もしその通りであれば、赤で統一された井伊家の軍装である「井伊の赤備(あかぞな)え」の一つとして作られたのかもしれません。(学芸員 古幡昇子〈のりこ〉)

     ◇

 特別展「日本の刀装―刀を飾る技と美―」(11月23日[火][祝]まで)で展示中。一般500円、小中学生250円。問い合わせは博物館(0749・22・6100)。