作曲家・三宅悠太さんが語る合唱「心動いた体験の感覚、熟成させて」

聞き手・松村康史
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 10月30日に大分市で幕を開ける第74回全日本合唱コンクール全国大会(全日本合唱連盟、朝日新聞社主催)では、若手作曲家、三宅悠太さんの作品が数多く演奏される。中学校部門で6校、高校で3校、11月6日の小学校部門でも6校。自身も中学校で合唱部だったという三宅さんから、出場者にメッセージをもらった。

10月30日から、第74回全日本合唱コンクールが始まります。全部門の演奏がインターネットを通じて初めてライブ配信されます。申し込み専用サイト(https://www.asahi.com/brasschorus2021/choruscompetition.html?ref=article

 今年も支部大会などで審査員を務めました。長いコロナ禍を経て、演奏がどうなっているだろうか、音が荒れたり雑味が増えたりしていないだろうか――。でも、みなさんの順応力は想像を超えていました。

 距離を取って歌うから、音が散る。その分、自分の声、他者の声を丁寧に聴き合うようにして、精密なアンサンブルを実現している演奏が多くありました。

 レッスンに招かれた合唱部では、みんなマスクをつけて黙々と取り組んでいました。合唱は「息の芸術」です。マスクの影響は大きいと思っていましたが、音だけではマスクの有無が分からないほどでした。

 中学校のとき、ピアノ伴奏者として声をかけられ、合唱部に入りました。同じ頃に聴いて衝撃を受けた「X JAPAN」とともに、今の自分につながっています。

 自分の作品を聴くのは、うれしい半面、つらいところもあるんです。作品にはコンプレックスというか、どうしても満足できない側面があって、自分を鏡で見続けるようなもの(笑)。作品を愛しつつ、どこかで拒絶しているからこそ、その先へ進めるわけですが。

 「こう歌ってほしい。こう歌えば一番美しい」という考えはあります。でも、思ってもみない演奏に接することがある。第三者が演奏してくれることで作品が120%になる、新たな発見がある。「やってやろう」という作為のない演奏、無垢(むく)な演奏に触れたとき、自分の曲を聴きながらウルッとすることがあります。

 この1年半ほど、練習をするのも困難で、世の中は暗くて、心を保つことが苦しい日々だったでしょう。それでも歌を続けるには、「思いの深さ」がないとできません。今年の出場者は、いつも以上に乗り越えてきたものが大きい。だから自信を持ってほしい。そこには金・銀・銅賞の結果という次元を超えたものがあるはずです。

 心が動いた体験は、生きる力に直結します。体験でつかんだ美的感覚、他者とのコミュニケーションで得た感覚。全国大会に出るような人たちですから、これからその感覚が自分の中で熟成されていくのを楽しみにしてほしいです。(聞き手・松村康史)

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 みやけ・ゆうた 1983年生まれ、東京都出身。東京芸術大学作曲科卒、同大大学院修士課程修了。第79回日本音楽コンクール作曲部門1位。多くのソリストや演奏団体から作品を委嘱され作曲している。

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 第74回全日本合唱コンクール全国大会は、全部門の演奏がインターネットを通じて初めてライブ配信される。申し込みは専用サイト(https://www.asahi.com/brasschorus2021/choruscompetition.html)へ。