真鶴町長が二転三転の末に辞意 夜中に役場で名簿コピー、選挙に利用
神奈川県真鶴町の松本一彦町長が26日、記者会見を開き、町職員だった当時に有権者全員が記載された選挙人名簿をコピーして持ち出し、町長選で有権者にはがきを送るのに使っていたことを明らかにした。松本町長は記者会見では「町長職をまっとうしたい」と続投を表明。しかし記者側から質問が相次ぎ、会見後の取材で、一転して辞任する意向を表明した。
会見での説明によると、松本町長は町民生活課長だった昨年2月ごろ、本庁舎の職員の引き出しから倉庫のかぎを取り出し、別棟の倉庫にあった選挙人名簿を持ち出した。他の職員がいない夜間に庁内のコピー機を使い名簿をコピーしたという。
松本町長は総務課長を経て昨年6月に退職し、同年9月の町長選に立候補。選挙に際し有権者にはがきを送るのに名簿を利用した。支持者らには、名簿の種類や出所は明かさなかったという。町長選では松本町長が、3選をめざした当時の現職を破って初当選した。
また、今年7月にも、選挙管理委員会の職員に指示し自宅に保管していた名簿のコピーを当時の現職町議1人に届けさせたという。
松本町長は議会との関係について「町議11人中、協力してくれるのは4人だった」と説明。副町長の選任に議会の同意を得るめどがたたず、現在も空席のままだ。9月に予定された町議選では定数が1減り、4人のうち1人が苦戦しているとの情報を得て、この町議に名簿を届けたという。
定数10となった町議選は14人が立候補。コピーを受け取った町議は落選した。
コピーを届けた選管職員も会見に出席。町長の指示に従った理由について、コピーを届けた町議は役場の元上司だったとし、「(当選が)危ないとうわさが流れた。30年来のおつきあいだったので、その方のためにと、軽い気持ちでお受けしてしまった」と話した。
町長は会見前に議会で「町長職を辞する」と表明。だが、その後に支持者から続投を望む連絡が入ったとし、会見では「その方たちを裏切ることはできない」と述べて辞意を撤回した。
だが会見後の報道陣との囲み取材では一転して、「皆さんのご意見をうかがい、この場に残ってはいけないと判断した。町長の職を辞したい」と述べた。辞任の時期は町予算の編成の時期なども考慮し、「影響が少ない時期」にするという。辞任後の町長選への出馬については、「審判を仰ぐ状況」かどうかを判断するとし、明言を避けた。(村野英一)
有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。