書き、魂をつなぎとめてきた小さき人々 桐野夏生さんと「ひととき」

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 人はなぜ書くのか。女性たちがくらしを書いてきた意義とは――。朝日新聞の女性投稿欄「ひととき」70周年を記念したイベント「くらしを書く、書いて生きる」が、10月2日に東京・築地で開かれました。幼い頃からひとときを読んできたという作家・桐野夏生さんが講演し、ひとときについて、書くことについて、語りました。

イベントの模様、11月20日まで動画配信中

講演とトークショーの模様を、11月20日まで動画配信しています(無料、要会員登録)。日本語字幕付き。詳細、申し込みはこちらから。

そこに一人ひとりの物語がある

 小学3、4年生くらいから、新聞を好んで読んでいました。といっても、1面を読むわけではなく、3面記事と、ほとんどは「ひととき」でした。なぜひとときを読んでいたかというと、そこに一人ひとりが生きている物語があったからだと思います。

 ひとときの魅力は、会ったこともなく、遠くに住んでいるのにどこか自分に似ている人、あるいは自分と同じような悩みを持っている人に対する共感や、慈しむ感情、そういうものが押し寄せてくるところだと思います。

 不思議なことにネガティブな感情がないといいますか、どの投稿を読んでも、「こういう人がいたんだ」という驚き、感嘆、そういうポジティブな感情ばかりが押し寄せてくる。

 私は感受性を育てられたような気がします。それは、女の人それぞれの生き方に対する共感であり、あるいは、世の中の理不尽さに対する共感でもあったと思うのです。私は今年ペンクラブの会長を拝命しましたが、90年近い歴史のうち、18人目で初めての女性会長です。これが今の日本の現状なのですから。

差別、侮辱「全くなかったなんて思わない」

 ひとときを語る上で連想した…

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