鳥の形をした天然木 嘉納治五郎の自然への愛着 28日から生誕祭

竹園隆浩
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 柔道の創始者でアジア初の国際オリンピック委員会(IOC)委員となり、「日本体育の父」と呼ばれる嘉納治五郎の生誕祭が28日から3日間、東京都文京区講道館で開かれる。7回目の今年は、景観を愛した嘉納が集めた天然木の置物が初展示される。

 国内の様々なスポーツの発展とともに教育者として多忙な生活を送った嘉納は、ストレス解消に自然とのふれあいを求めた。

 1927(昭和2)年発行の雑誌「柔道」に、天然木集めのことが書かれている。それによると、40代で糖尿病を患い、保養を勧められ、旅行して新鮮な空気を吸うことを心掛けた。自然の風景を眺めることが趣味となり、そこから奇妙な形の天然木を楽しむようになったという。

 今回、現物が展示されるのは「鳥の形をした天然木」=写真。あたかも森林の樹木の上に鋭い爪を持つ猛禽(もうきん)類がたたずむように見える。このほか虎、鶴、馬やカニに見えるものなど、収集した天然木の写真がパネルで掲示される。

 嘉納の自然への愛着は、1893(明治26)年に高等師範学校(現筑波大)の校長に就任した当時からあったようだ。それが、泊まりがけの「修学旅行」を推奨したことでも分かる。

 それまでは鍛錬のためとして、軍隊の出征などを意味する「行軍」の言葉を使った「行軍旅行」と呼ばれる遠距離行進がよく行われていたという。しかし、嘉納は就任3年目の95(明治28)年には、同校では初となる東京・隅田川から鎌倉まで1泊2日の日程の旅を楽しませた。地図や途中の景色の情報を与え、戻ってきた後には日記を書かせた。

 日本武道学会副会長の藤堂良明・筑波大名誉教授は「一つのことに集中しすぎると、他のことがおろそかになる。嘉納にすれば、当時まだ珍しかった修学旅行は自然の摂理、力に子どもたちが目を配ることで、様々なことに興味を持つ情操教育が生まれていく、と考えたのではないか」という。

 千葉県我孫子市など景勝地に別荘も幾つか建てた嘉納は、「趣味は誠によいこと」として晩年まで自らの優雅な時間を大切にした。しかし、「人間は本来の目的とするものがあって、なお趣味も持っているという意味で尊い。趣味のためにその本領を奪われてしまうようになってはならぬ」との苦言も残している。

 嘉納が一時の安らぎを求めた天然木のぬくもりは、時代を超えて現代にもつながっている。

 入館無料。期間中、他のイベントを含めて来場者には特製マスクケースがプレゼントされる。(竹園隆浩)