第11回尼崎市議選、まさか1票差の明暗 2人が4カ月後に交わした言葉

有料会員記事2021衆院選ニュース4U

矢島大輔
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 「自分の1票で政治が変わる実感がない」。SNSで情報交換しながら取材する「#ニュース4U」に、大学生の女性(20)から疑問が届きました。しかし、今年6月にあった兵庫県尼崎市議選は、1票差で明暗が分かれる選挙結果でした。(矢島大輔)

 「票差が開いてたらあきらめもつく。1票やから悔いが残る」

 阪神尼崎駅前の喫茶店。昼でも薄暗い店内で抹茶を飲みながら、寺坂美一(よしかず)さん(45)は話し始めた。

 今年6月の兵庫県尼崎市議選(定数42、候補者55人、有権者38万人)で落選した。獲得したのは、1912票。最下位の当選者は、1913票。「1票の重み」と題し、ブログに「何とも言えない結果となりました」と無念さをつづった。

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 行政側のミスが、選挙後に発覚した。

 名古屋市千種区で不在者投票した男性の1票を同区選挙管理委員会が送り忘れた。区選管は「貴重な権利を奪った」と謝罪した。

 開票はされず、どの候補者に投じたかはわからない。寺坂さんは言う。

 「55分の1の可能性があった。意図せずとも、人為的なミスはあるんです」

 名前の書き間違えなどがある疑問票を、有効にするか無効にするかの判断は行政に委ねられる。

 自らの名「よしかず」と似た「かずお」名の候補者がいた。1票差で当選したのは「けいいち」だが、ほかに3人「けんいち」名の候補者がいた。

 「集票ミスがあれば、自分を応援してくれた人の意思が、死んでしまう」

 公職選挙法に基づき市選管に異議を申し立て、票を数え直すよう求めた。

 市選管は「開票事務は適正に執行された」と棄却。兵庫県選管へ改めて申し立てをし、今は判断を待っている。

 尼崎市の父子家庭で育った。新聞配達などのアルバイトで学費を稼いだ。公教育の充実などを訴えて29歳で初当選。市議3期目には副議長を務めた。

 だが、2017年の4回目の選挙で落選。今回は、顔の見える固定票を積み重ねる選挙戦略に変えた。町内会などの活動に精を出し、手応えを感じていた。

 なぜ、1票足りなかったのか。過去最低となった投票率40・37%に目が向いた。

 「生活実感で、政治が必要と思えるメリットが見えにくいのでは」

 かつては「この地域では○○さん」という政治家がいた。道路の整備や街灯の設置など身近な困り事を町内会を通して相談できた。都市化が進み、町内会への加入率が激減。政治家との接点も減った。市議時代、名刺を渡しても「誰ですか?」という反応もあった。

 市議会を離れ4年。反省を込めてこう考えるようになった。

 「市民の思いと、議会や行政がやっていることが乖離(かいり)している。国政も同じではないか。政治が別世界のように遠くなってしまった」

 10月初旬。寺坂さんは意外な人物と初めて顔を合わせた。自らと1票差で市議に当選した、迫田(さこだ)敬一さん(50)だった。

■1票差で当選「報いたい」…

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