カレンダー配り投票行動予測をリスト化、政治活動流用か 郵便局長会
郵便局長らが経費で買ったカレンダーを政治流用した疑いがある問題で、一部の地方郵便局長会がカレンダーの配布相手をリスト化し、来夏の参院選の投票行動を評価するよう促すファイルを局長に配っていたことが分かった。営業活動で得た顧客の個人情報の政治流用につながりかねない行為で、日本郵便は現状を確認し、問題があれば対応するとしている。
全国郵便局長会は参院選で会出身者らを組織内候補として擁立し、2019年の選挙でも比例の当選者トップの60万票を獲得した。会員誌などによると、次の参院選も前回以上の得票をめざし、早くから活動を始めている。
複数の局長によると、近畿地方郵便局長会は昨秋、「カレンダーお届け先リスト」と題したファイルをメールで局長らに配った。配布先の名前や住所、同居者などをパソコンで記入するものだが、A~Cの3段階で選ぶ「評価」という欄がある。Aの基準は「必ず投票に行き、氏名を書いてくれると確信を持てる人」。「氏名」は局長会の組織候補の名前とみられ、このファイルを活用して局長らに活動するよう求めている。
カレンダーの配布先には友人・知人だけでなく「お客さま:ロビー活動で対象になった方」も含む。内部文書によると、「ロビー活動」は政治活動の支援者確保に向け、局長が郵便局のロビーで顧客に声をかけるなどの行為を指す。
顧客の情報を記録して支援者づくりにいかす考えは、中国地方郵便局長会の方針でも示唆されている。政治活動方針を記した昨秋の文書「令和4年参議院選挙に向けた目標・取組」の中で、支援者拡大のために徹底する取り組みとして「窓口来訪者の記録(社員の協力も願う)」「会員自ら窓口に出て積極的に声掛け(雑談を含む)を行う」を挙げる。
個人情報保護法に詳しい森亮二弁護士は「日本郵便が持つ個人情報を局長が政治目的で使うのは、情報漏洩(ろうえい)や目的外利用が疑われる行為で、会社側の安全管理措置の適切さが問われる」と指摘。局長会としての立場を明示せずに郵便局内の声かけで支援者を探せば「情報取得の主体が本来は局長会なのに日本郵便であるかのように偽る行為で、不適切だ」と話す。
日本郵便は朝日新聞の取材に実態を調べる考えを示し、「顧客情報の流用が判明すれば、適切に対応する」と回答した。近畿、中国の各地方会は「取材は全国郵便局長会で受ける」とし、全国郵便局長会には19日までに取材を申し込んだが、27日時点で回答を得られていない。
同会は11日付の取材回答で、カレンダー関連の指示は業務上のもので政治目的ではないと説明していた。日本郵便は「当社以外の者が業務上の指示を出すことは不適切だと認識している」としている。
局長会には約1万9千人の局長が加入する。中央組織のもとに12の地方郵便局長会、238の地区郵便局長会が連なる。(藤田知也)