謎の消滅繰り返す巻き貝、高校生が研究 専門家「ハイレベルすぎ」

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小坪遊
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 絶滅の恐れのある「カヤノミカニモリ」という巻き貝の知られざる生態が、熊本県の高校でひそかに解明されていた。専門家から「あまりにもハイレベルすぎる。正当に評価される機会を得ることすら難しい希少な研究だ」と聞いて、調べてみた。

 なぞに迫ったのは、熊本県立天草拓心高校マリン校舎(苓北町)の科学部の生徒たち。2013年から代々、カヤノミカニモリの研究を続けている。現在の部員、2年生の野田心優(みゆう)さんにとっては「毎日研究している、身近な存在」だという。

 この貝は、殻の長さが2センチ弱で、オニノツノガイ科というグループの種の一つ。環境省のレッドリストでは、準絶滅危惧種とされる。野田さんが「身近」という通り、高校から数分の海岸には「大量に群生する」そうだが、熊本県のレッドリストでも絶滅危惧Ⅱ類。四国や本州の各地では、絶滅か激減しているとみられ、実際は危機的状況にある。

 だが、詳しい生態は不明だった。この貝を守っていくのに必要な、基礎的な情報が欠けていたのだ。

 それを、生徒たちは飼育に取り組んで産卵や生育の過程を次々に解明。過去の文献には「肉食」とあったが、藻類を食べることも突き止めた。19年には卵から幼生、若い貝まで成長させることにも成功した。野田さんは「今の状況があるのは、先輩たちの研究のおかげ。感謝しています」と話す。

 貝類の分類学者として知られる福田宏・岡山大准教授は、一連の研究内容を「何から何まで驚きに満ちている」と評する。オニノツノガイ科全体でも、飼育下での生態の解明はまれだという。なかでも、カヤノミカニモリは「集団が原因不明の消滅を繰り返すなど、動向が予測できない種」で人工的に産卵や成長を記録することは、まず不可能と考えていたそうだ。「これは国際誌に堂々と発表されてしかるべき、超絶的に優れた研究だ」と断言する。

 記録を調べると、科学部の研…

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