第34回夫からの因縁、そこに絡む鈴木宗男氏 女性一騎打ちの北海道11区

2021衆院選

中沢滋人
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 前回衆院選と同様に、立憲前職の石川香織氏(37)と、自民元職の中川郁子氏(62)の一騎打ちとなった北海道11区。2005年の衆院選では石川氏の夫・知裕氏と中川氏の夫・昭一氏(故人)が対決し、それ以来の「因縁」が続く。さらに別の「因縁」がある鈴木宗男参院議員(73、日本維新の会道総支部代表、新党大地代表)もからみ、選挙戦は激しさを増す。

選挙区を歩く@北海道

 衆院選が公示され、道内各地で激しい選挙戦が展開されています。北海道の各選挙区で問われる政策課題や選挙戦の状況を追います。今回は道11区を歩きます(随時掲載します。候補者の年齢は投開票日現在)

 「議員になってから、野党議員では公共事業が減らされるといううわさとの戦いでした。それは真実ではありません。就任前と比べて公共事業費は今年度は135%。減っていません」

 公示日の19日、石川氏は北海道足寄町の個人演説会で100人超の聴衆に語りかけた。予算委員会で質問に立ち、政策に影響を与えたことなどを語り、「候補者が信用できる人かどうか、この4年間でどれぐらい成長できたか、それを皆さんに判断してもらうことが、この選挙戦だと思っています」と語った。

 石川氏は前回衆院選で、政治資金規正法違反事件で有罪が確定し、公民権停止中だった知裕氏に代わり立候補。野党共闘で候補擁立を取り下げた共産の支援も受け、初当選を果たした。今回は実績を強調し、街頭演説やミニ集会を続ける。知裕氏は「4年間で彼女は大きい仕事をした。もう『石川知裕の代わり』ではない」という。

 一方の中川氏。昭一氏の急死後、義父・一郎氏時代からの「中川王国」を引き継ぎ、12年に初当選。しかし前回は石川氏に約1万6千票差で敗れた。復活を期す今回は、1次産業振興や物流強化などを訴え、党中央とのパイプがある与党代議士の必要性を強調する。

 そんな中川氏を支援するのが、推薦を出している新党大地の鈴木氏だ。

 「宗男先生とはこれまでいろいろありました。義父中川一郎が亡くなってから数々の非礼を宗男さんにおかけした。この非礼をわびたいと思います」

 21日、足寄町の農協庁舎前。雨の中、街頭演説で中川氏はそう語った。隣には足寄出身の鈴木氏と、長女で自民前職の比例単独候補、鈴木貴子氏(35)の姿があった。

 マイクを握った鈴木氏は「私が政治家として今日あるのは中川一郎先生のおかげ。その先生に報いるためにも、もう一度、この十勝に中川という名前を復活させてください」と声を張り上げた。

 鈴木氏はかつて秘書として仕えた一郎氏の死去後、後継を巡り昭一氏と同じ選挙区で争った。以来、十勝の保守派は分裂状態が続いた。新党大地の発足後は、同じ足寄出身で民主党(当時)から立候補した知裕氏と連携。知裕氏は12年の総選挙では大地公認で立候補した。

 だが、前回衆院選前に大地は自公支援に回った。大地は前回も中川氏に推薦を出したが、当時、鈴木氏が大地の比例北海道ブロックの候補者だったことなどもあり、鈴木氏と中川氏が並んでマイクを握ることはなかった。今回、鈴木氏は中川氏の事務所開きや決起集会にも駆けつけ、「歴史的和解」(鈴木氏)をアピール。中川陣営からは「ここまで宗男さんが熱く応援してくれて本当に感謝している。保守の大同団結ができた」(道議)との声が上がる。

 石川陣営は、十勝地方に根強い支持基盤を持つ鈴木氏の動きを警戒する。陣営幹部は「鈴木氏本人がマイクを握る影響は小さくはない」と見る。今回、石川氏とは別に政党選挙カーで回ることを徹底している知裕氏が、19日の足寄の個人演説会では石川氏の隣で支持を訴えた。「宗男氏が中川氏支持に大きくかじを切った。それでもなお、香織を頼みますとお願いしないといけないと考えた」と理由を話す。

 複雑な心境で眺める支持者もいる。

 中川氏と鈴木氏の街頭演説を見ていた大地支持の70代男性は、長年鈴木氏を応援してきたという。それでもこう話す。「大地が決めたから、中川と書けるかと言われても、そう簡単にいかない。鈴木宗男、中川昭一の骨肉の争いが、いまだに僕らの胸の中に刺さっている。僕も今迷っている」(中沢滋人)

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