どうする公共施設 五輪施設は「長寿化」、公民館分館は「廃止」

北沢祐生
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 長野市が保有する公共施設(建築物)は1400近くあり、長野冬季五輪のために造った施設も含まれる。老朽化と人口減で対策が求められる一方、各施設の活用を望む住民も多い。市民の納得を得ながら将来像をどう描くのか。31日投開票の選挙で決まる新市長が負う課題だ。

 10月の平日午後、ヨガ教室に参加した十数人の女性が畳の広間で輪を作っていた。

 長野市川中島町公民館の中津分館。案内してくれた同町の元県職員、滝沢信男さん(81)は「健康マージャンを楽しむグループもいますよ」。常駐職員はいない。川中島町にはほかに、市町村合併前の旧村からの川中島、御厨の2分館があり、本館と3分館の体制で約半世紀、地区の社会教育生涯学習、住民同士の交流の場となってきた。

 設置者の市は2月、公共施設ごとの個別施設計画(2030年度までの10年間)を作り、その中で3分館の「廃止」を打ち出した。1973~87年に建てられ、うち二つは耐震性能が整っていない。市は「補修しながら地区への譲渡、または廃止を進める。譲渡先がない場合、併設の農協と施設のあり方について検討する」とした。

 個別計画では、市南部に多い二十数カ所の「分館」の廃止を決めた。ただ、川中島の3分館は年間利用者数が約8千~1万4千人(19年度)に上り、分館の中でも上位。個別計画の方針に疑問を持った滝沢さんたちは6月、地区人口約2万7千人の1割近い2400人分の署名を添えて存続要望書を市長に手渡した。

 「子育て中の親の集まりや高齢者のヨガ、ダンスといった健康づくり。これだけ多くの住民が使っているとは思わなかった。人口に見合った投資がされているのか、市計画に地域住民の意向が反映されているのかと考えてしまう」と滝沢さんは話す。

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 学校や公営住宅など、長野市保有の公共施設は1367(21年4月現在)。築30年以上の施設が約半数で、順次、老朽化対策が要る。市は、今後30年間に建物の更新や改修、維持管理などの費用として総額約6927億円を見込むが、厳しい財政や人口減少、施設需要も考慮する必要がある。そこで市は、公共施設について「20年間で延べ床面積を20%縮減」という目標を打ち出し、その達成に向けて個別計画を策定。小規模なものなどを除いた901施設について、10年間の対策を利用状況や施設性能、役割や地域性などを勘案し、「継続」「廃止」「民営化」といった方向性で示した。

 ただ、縮減目標に含まれず、延べ床面積全体の約9%(計14万5千平方メートル)を占める施設群がある。エムウェーブなど長野冬季五輪のために造られた大規模5施設(製氷が中止されたそり競技場「スパイラル」は除く)だ。築20年以上が経ち、市は16~25年度の改修・修繕費を45億円と見込む。

 さらに市は、5施設を築80年までもたせる「長寿命化」を打ち出した。多額の維持費が予想され、議会では「レガシーコスト、負の遺産ともいえる」との指摘も。市幹部ですら「現在のまま築80年まで維持することが合理的なのか、費用を捻出できるのかといった見通しが難しい大きな課題」と述べている。

 川中島地区の公民館3分館の存続を求めている滝沢さんは、公共施設のあり方見直しに異論はないが、五輪施設や市中心部の施設が優遇されているようにも見えるという。「地域の実情は地元住民が一番わかっている。行政と市民が互いに知恵を出し合うことが大切ではないでしょうか」と話した。(北沢祐生)