ともにつくり、触れた長嶋茂雄さんの感性 文化勲章受章の洋画家

編集委員・安藤嘉浩
[PR]

 今年の文化勲章がプロ野球巨人終身名誉監督の長嶋茂雄さん(85)ら9人に贈られることが26日、発表された。受章者の中には、長嶋さんと親交のある洋画家の名前もあった。絹谷幸二さん(78)。2人はかつて、「新世紀生命富士」というタイトルの油絵を共同制作している。

 「長嶋さんがキャンバスと向き合う姿は、バッターボックスに入るときの動きと一緒だったんですよ。手の先をクルクルと回しながら、ね。そして、柔らかい感性が、線や面となって現れてくるんです」

 絹谷さんから当時の話を聞いたのは2012年。共同制作の様子を懐かしみ、笑顔で再現してくれた。

 2人の共同制作は長嶋さんが巨人の監督だった01年。世界の有名人の絵画を集めたチャリティーイベントに長嶋さんも出展することになり、絹谷さんから指導を受けた。制作期間は約3週間。長嶋さんが絹谷さんのアトリエに通って筆をとったという。

 完成した「新世紀生命富士」は、真っ赤な太陽と、日差しを浴びた富士山が共存するエネルギッシュな作品だ。

 エネルギーに満ちた独自の画風で知られ、1998年長野五輪の公式ポスターの原画を制作した絹谷さんと、絵画好きな長嶋さん。2人の交流は以前からあったという。長嶋さんが巨人の監督に復帰して2年目でセ・リーグ優勝を果たした94年秋には、絹谷さんが2枚の絵画を贈っている。長嶋さんが大好きな富士山や太陽がダイナミックに描かれた作品だという。

 「その絵から気をもらった、と長嶋さんは言っていました。作品のエネルギーを体内に取り込む。そういうことができる人なんです」

 巨人は日本シリーズで西武を破り、長嶋監督は念願の日本一監督になった。

 長嶋さんと付き合っていて絹谷さんが驚いたのは、その眼力の確かさだという。

 「ものを見るのは目ではない。目というレンズを通して脳みそが見ている。その消化スピードが素晴らしいんです。長嶋さんの野球をカンという人もいるけど、それは違いますよ。相手の動作などを独特の感性で、コンピューター以上の速さで解析することができるんです」

 文化勲章の親授式は11月3日、皇居である。(編集委員・安藤嘉浩