有機農家なのに180haの大農場 みそもしょうゆも自分で作る理由

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文・大村美香 写真・伊藤進之介
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 金沢市の井村辰二郎さん(57)は、日本では抜きんでたスケールの有機農家です。耕作面積は約180ヘクタール、うち約150ヘクタールが有機栽培で、米、麦、大豆などを生産しています。これまで有機農業は主流を外れた存在と見なされがちでしたが、実は変化が起きようとしているのです。農林水産省は今年、2050年までに有機農業の面積を100万ヘクタールに広げるという目標を掲げました。井村さんに、いま大規模な有機農業を営むことへの思いを語ってもらいました。

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腰の高さまで伸びた雑草にも負けず、足元に実った大豆を手に取り笑顔を見せる井村辰二郎さん=金沢市

 ――なぜ、有機農業を始めたのですか?

 金沢市で続く農家の5代目で、24年前に会社員を辞め実家を継ぎました。経営理念は「千年産業を目指して」。千年後もこの地を耕し続けられるよう、持続可能性と生物多様性に資する農業をしたいと考えました。当初は、有機で米と野菜を少量多品目育て、消費者とつながる形を思い描いたのです。

 しかし家が耕作する田畑は40ヘクタール。米、麦、大豆にスイカ。作業に追われ、新しい仕事に手が回らない。そこで家の主要品目の麦と大豆を有機栽培に転換しました。

 ――田畑を広げていった理由は?

 農家の使命は耕すことだと思ったからです。就農当時、圃場(ほじょう)の大半は金沢市郊外の河北潟干拓地にありました。ここは国の事業で水田として計画されたものの、米余りで畑地に変更された経緯があります。1100ヘクタールある干拓地の農地のうち当時200ヘクタールは耕作放棄地。ヨシだらけで荒れたまま、相当目立った。

 なんてもったいない、これを耕さなくて何をするんだ、という心持ちでした。1年に10ヘクタールずつ広げた時期もあります。

 有機の大豆のひきあいが強かったこともあって河北潟干拓地に続き、さらに能登半島でも耕作放棄地を耕しました。

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アイガモ農法で育てた田んぼで稲穂をかき分け、笑顔を見せた=金沢市

生態系にも分け与える

 ――広大な農地で、病虫害の対処は大変では。

 20年以上有機を続けていると生態系が豊かになります。害虫も多いが益虫も多い。自然界に一人勝ちはありません。害虫が増えれば捕食する虫や鳥が増える。1割、2割を生態系に分けてあげて減収しても、長い目で見れば減収にはならない。そんな考えに至っています。

 麦には赤かび病というやっか…

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