部下の供述「信用できない」 不動産会社元社長に無罪 大阪地裁

松浦祥子、浪間新太
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 学校法人「明浄学院」(大阪府熊取町)の土地売却の手付金21億円を着服したとして、業務上横領の罪に問われた不動産会社「プレサンスコーポレーション」(大阪市)元社長、山岸忍被告(58)の判決公判が28日、大阪地裁であった。坂口裕俊裁判長は、「(山岸元社長の)部下の供述は信用できず、横領の故意があったと認められない」と述べ、無罪(求刑懲役3年)を言い渡した。

 山岸元社長は、法人が2017年に高校の敷地をプレ社に売却する契約を結んだ際、法人元理事長の大橋美枝子受刑者(63)=同罪で実刑判決が確定=らと共謀し、法人に振り込まれた手付金21億円を横領した事件に関わったとして、19年に大阪地検特捜部に逮捕、起訴された。

 判決によると、大橋元理事長は法人の経営権を得るため、山岸元社長から個人的に借り入れた18億円を使って理事長に就任。法人が売却契約を結んだ際、プレ社側から振り込まれた手付金21億円を横領し、山岸元社長への返済にあてた。検察側は、山岸元社長の部下(56)=同罪で有罪判決が確定=が「大橋氏個人に貸すと説明した」と認めた供述などをもとに、山岸元社長が個人に貸した金を法人から返済してもらうことを認識しており、大橋元理事長らと共謀して横領に関与したと主張していた。

 一方、山岸元社長は「一切関与していない」と無罪を主張していた。

 判決は、特捜部の検察官が取り調べの際、この部下に「(プレ社の)評判をおとしめた大罪人。会社が被った損害を賠償できるのか。それを背負う覚悟で話しているのか」と発言したと指摘。この発言が「必要以上に強く責任を感じさせ、真実とは異なる供述に及ぶ強い動機を生じさせかねない」と述べ、「故意に虚偽の供述をしている可能性が高い」として部下の供述は信用できないと判断し、山岸元社長が横領に関与していないと結論づけた。

 山岸元社長は判決後に会見し「(特捜部には)もっと丁寧な捜査をして頂きたかったという一言に尽きる」と話した。秋田真志弁護士は「客観的な証拠の分析が不十分なまま見立てに沿って捜査し、密室の取り調べで供述を作った」と述べた。ある検察幹部は取材に対し「もっと供述の裏付けをできなかったのか。検察官の言動が不適切とされた点など反省すべき所は反省する」と語った。大阪地検の八沢健三郎次席検事は「判決内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応する」とのコメントを出した。

 元刑事裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授は「無理やり供述を取るのではなく、状況証拠を積み重ねる姿勢を貫くべきだった」と指摘した。(松浦祥子、浪間新太)