「自分の存在を消したいと思った」東京五輪後も抱える新谷仁美の苦悩

辻隆徳
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 陸上の中距離種目に特化した「TWOLAPS ミドルディスタンスサーキット東京大会」が30日、東京・駒沢オリンピック公園であり、新谷仁美(33)=積水化学=が女子5000メートルにペースメーカーとして出場した。結果を出せなかった東京五輪以来のレースとなり、「まだ前を向けていない。正直、人前で走るのが恥ずかしい」と時折言葉を詰まらせながら素直な気持ちを明かした。

 新谷は2014年に現役を退いたが、東京五輪をめざして18年に復帰した。

 満を持して臨んだ今夏の五輪では女子1万メートルに出場。好成績が期待されたが、結果は32分23秒87の21位。自身の持つ日本記録よりも2分以上遅かった。

 五輪のレース後、新谷は泣きながら「(昨年)12月に代表に決まってから、ただただ逃げたかった。選手がどういう目で見られているか不安だった」。コロナの影響で五輪反対の声がある中、半年以上も不安を感じていたと話していた。

 この日、五輪後は8月いっぱい自宅に引きこもっていたことを明かした。引退は考えなかったというが、「速く走れないと価値がないと考えている人間なので。(自分の)存在を消したいと思っていた」。

 それでも、9月から練習を再開した。

 「ありがたいことにケガもなく、走れてしまう。気持ちの部分をごまかしながら練習している」

 来月には全日本実業団対抗駅伝(クイーンズ駅伝)が開催される。昨年、新谷の所属する積水化学は惜しくも2位で優勝を逃した。

 新谷はクイーンズ駅伝出場について「けがをしない限り出るつもりです」と話した。

 この日の大会は有観客で実施され、新谷の名前が呼ばれると、どの選手よりも大きな拍手を受けた。新谷はサインを求める子どもたちに丁寧に対応していた。

 「少しずつ前を向けるように。またみなさんを楽しませる走りを見せたい。好きだと言ってくれた私の笑顔を見せられるように頑張りたいと思います」(辻隆徳)