消える市民、秘密施設で死者数万人か アサド政権の拷問、指摘相次ぐ

其山史晃
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 内戦下のシリアで、多くの市民が行方不明になっているとの指摘が相次いでいる。なかでもアサド政権の治安機関によって拘束されたケースが多いとされる。国連の最新報告書は、混乱が始まった2011年以降、政権の秘密施設に収容された市民が拷問や性暴力にさらされ、死者数は数万人規模にのぼるとの見方を示している。

 10年末に始まった中東の民主化運動アラブの春」はチュニジアエジプトの独裁政権を倒し、11年3月にはシリアに波及した。政治改革を求めて全国に広がったデモをアサド政権は徹底的に弾圧。反体制派や過激派組織が入り乱れる内戦に突入した後も、政権は治安機関をフル活用して、幅広い市民を対象に拘束を続けたとされる。

 この問題に関して国連のシリア独立調査委員会は今年3月に報告書をまとめた。11年以降、アサド政権の収容施設での死者数は「控えめに見積もって数万人」とし、逮捕された人たちのうち数万人の居場所がわからないとしている。施設では少なくとも20種類の拷問が確認され、レイプを含めた性暴力も多数確認されているという。

アサド政権は疑惑を全面否定

 米財務省経済制裁を管轄する外国資産管理室(OFAC)も今年7月、シリアのアサド政権による八つの拘束施設を制裁対象リストに加えた。同省の発表によれば、内戦下でアサド政権が収監した市民のうち少なくとも1万4千人が拷問の末に死亡した。消息不明になったり、拘束されたりしたと伝えられる市民は13万人以上。その圧倒的多数はすでに死亡したか、家族との連絡が取れないまま拘束中と推定されるとしている。

 国連調査委などは、アサド政権側が関与したと判断された拷問などについて、人道に対する罪戦争犯罪にあたると警告を発してきた。

 これに対し、アサド政権は「シリアに拷問を担当する部隊や政策はない」と全面的に疑惑を否定してきた。しかし、拷問の現場とされる収容施設は、外部の目が全く届かない状態にある。人権侵害の疑惑の全容は権威主義国家の壁に阻まれ、秘密に包まれている。(其山史晃)