第15回議論されなかった「外国人参政権」 与野党ともに公約に掲げても

有料会員記事2021衆院選

玉置太郎
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 「私には選挙権がありません」――。今回の衆院選にあたって「#ニュース4U」取材班が政治や選挙への思いを読者に尋ねると、そんな声が寄せられた。

 投稿した女性は日本で生まれ育った在日コリアン2世。外国籍住民の参政権は1990~2000年代に注目されたが、今回の選挙でも議論はほとんど聞かれなかった。当事者の思いから、参政権の問題を改めて考える。(玉置太郎)

「投票行ってや」娘2人にメール

 投稿をくれたシンさん(67)は、衆院選の投票日を3日後に控え、2人の娘にメールを送った。

 「もうすぐ選挙やけど、棄権せんと投票行ってや」

 私の分まで――、という思いを込め、選挙前にはいつも送る。大阪市に住むシンさんと夫のイさん(67)は在日コリアン2世。日本で生まれ育ったが、韓国籍のため選挙権がない。

 30代の娘2人は日本人男性と結婚し、日本国籍に変えた。長女は結婚前、韓国籍であることで相手の父親から結婚に反対された。「帰化するしかない、って思ったんやろう」とシンさんはおもんぱかる。

 イさんは印刷会社で長年勤め、シンさんは販売や接客の仕事を続けてきた。「この国で生まれ育って、日本語を話して、働いて税金納めて、子どもも育てた。そやけど一番大事な、社会や政治のことを考えるための選択肢が、今もない気がして」とシンさんは言う。

 政府は外国籍住民に対して参政権付与ではなく、日本国籍取得を促す政策をとってきた。イさんは「1世の親たちが苦労してきた生き方を見てるから、やっぱりそれ(国籍)は曲げられへん」と話す。

 外国籍者の指紋登録に行った区役所で、職員から差別的な扱いを受けた記憶も、心に引っかかっている。

参政権求めオンライン署名

 東洋大社会学部教授の金泰泳(キム・テヨン)さん(58)は父が1世、母が2世の在日コリアン。12年前、韓国籍から日本国籍に変えた。「どうしても参政権を得たい」という気持ちからだった。当初は「在日コミュニティーを離れるのか」という批判も受けたという。

 今年1月、「在日のエンパワーメント(力を高めること)になれば」と、オンライン署名サイト「Change.org」で定住外国人の地方参政権を求める署名活動を始めた。これまでに約1万6千人が賛同し、2万5千人に達すれば総務相に提出する。

 一方、SNS上では金さんに対して「日本国籍を剝奪(はくだつ)しろ」「韓国に帰れ」といった中傷がある。

最高裁判決きっかけに国会論議

 参政権には、衆院選のように国会議員を選ぶ「国政参政権」と、自治体の首長や議員を選ぶ「地方参政権」がある。外交や国防に直接関わる国政参政権に対し、より生活に身近な地方参政権を外国籍住民に認めるかどうかは、1990年代から議論があった。

 大きなきっかけは、95年の最高裁判決だ。在日コリアンらが選挙権を求めた訴訟で、最高裁は「永住外国人らに地方選挙権を与えることは憲法上禁止されていない」との判断を示した。一方で「国の立法政策にかかわる事柄」として、請求は退けた。

 これを受け、公明党共産党民主党が98年以降、永住外国人に地方参政権を認める法案を国会に提出。自民党は99年、自由・公明党との三党連立の政権合意書に、地方選挙権付与を盛り込んで署名した。しかし、自民党内での反対が根強く、実現しなかった。

 各地の自治体議会でも、地方参政権付与を政府に求める意見書が相次いで採択された。

消えた議論 背景は…

 2010年には民主党政権が法案提出を模索したが、党内外の反対で断念。その後、議論は消えた。今回の衆院選でも与党の公明党、野党の共産党、社民党が地方参政権付与を公約に掲げたが、注目が集まることはなかった。

 参政権を求める活動を続けて…

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