「いい投球したら1億円や」実現させた左腕 地方からのし上がるまで

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 「プロ注目の左腕」だった西日本工大の隅田知一郎(ちひろ)が、一気に「ドラフト1位候補」へと格上げされた試合がある。

 6月7日、神宮球場。隅田にとって初めての、全日本大学選手権のマウンドだった。

 「スカウトがいっぱいおるぞ。このためにやってきたからな」

 試合前のキャッチボールをする左腕に、武田啓監督が声をかけた。「いい投球をすれば、1億円や」。ニヤリと笑う監督の言葉を聞きながら、隅田は「やってやろう」と気合を入れた。

 相手は関東の強豪、上武大。スカウトにとっても、全国レベルを相手に隅田がどんな投球をするかは、大きな注目ポイントだった。

 ここで隅田は圧巻の投球を見せる。

 140キロ台後半の直球に多彩な変化球。8回を4安打で抑え、三振も14奪った。中日に1位指名されるブライト健太に一発を浴び、0―1で敗れたものの、この好投が約4カ月後の「4球団競合」につながったのは間違いない。

 福岡・苅田町にある西日本工大には、工学部やデザイン学部などがある。野球では全国的になじみが薄く、昨年、ヤクルトの育成4位で丸山翔大が大学史上初めて指名された。

 そんな、いわゆる「地方大学」の選手に、これだけの1位指名が集まったのは異例と言っていいだろう。

 事実、隅田も大学選手権の前まで知名度はさほど高くなかった。

 実力がなかったわけではない。ただ、スカウトが選手を評価する際に重視するのは、投手の球速や打者の飛距離だけではない。

 「全国レベル」を相手にしたときのプレーが、大きな指標となる。隅田には、その舞台がこの6月までなかったということだ。

 高校時代はまったくの無名だった。

 長崎・波佐見高に入学したと…

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