令和の「所得倍増」、元祖・池田勇人との違い まず確かな展望を  

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編集委員・駒野剛
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記者コラム「多事奏論」 駒野剛

 「所得倍増」。懐かしい言葉と再会だ。

 岸田文雄首相が自民党総裁選で「令和版の所得倍増を目指す」と打ち上げた。

 還暦超えの私とは違い、若い世代には耳慣れないかもしれない。計画には「元祖」がいる。岸田氏率いる派閥宏池会の初代会長、池田勇人元首相だ。1959年2月に訪れた広島市で「月給2倍論」を語ったのを皮切りに、各地で説いて回った。

 池田は政権につくや「国民所得倍増計画」を政府の公式政策とした。61年度からの10年間に実質国民総生産(実質GNP)を年率平均7・2%増やして実質国民所得を倍増させることをうたい、実現に向けて①社会資本の充実②産業構造の高度化③貿易と国際経済協力の促進④人的能力の向上と科学技術の振興などを進めるとした。

 池田が倍増論を言い出した頃、周囲の人たちは「そんなバカなことが」と与太話程度に受け止めていた。

 しかし、池田は本気だった。彼の下で首相秘書官を務めた伊藤昌哉氏の「池田勇人とその時代」にこんなくだりがある。

 池田邸に夜集まる記者らの間で、衣食は不自由を感じなくなったが住はまだまだ苦しい、と話題になった。これに池田は「そのよくなり方はたいへんなものだよ、君たちの給料だって10年たてば倍になるんだ」と言った。記者らは信用しなかったが、池田は「絶対なる」と譲らなかった。

 政権目当ての「まき餌」と見た周りを尻目に、池田は実現に命を懸けた。

 なぜか。二つの根拠があった。

 大蔵省(現財務省)で税制畑…

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