熱血教官が服装にうるさい理由 「自分が死ぬ」と思った28歳の教訓

吉村駿
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 秋の叙勲が発表された。京都府内では、社会の様々な分野で顕著な功績を上げた人への旭日章が23人に、公的な仕事に長年携わった人への瑞宝章が73人に贈られる。発令は3日。

消防職員38年 瑞宝章綬章の安岡正之さん(70)

 消防職員として38年。忘れられない火災現場がある。

 7年目の28歳の時だった。当時、宇治市内にあった平屋建て商業施設が深夜に全焼する火災が発生。当直勤務だった安岡さんは、ポンプ車で急行し、ホースを片手に、無我夢中で、放水を続けた。

 建物に近づくと、熱風が体に吹きつけ、火の粉が飛ぶ。黒煙に包まれ前も見えなくなった。「人助けの前に『自分が死ぬ』と、焦った」。ただ、現場に急いで駆けつける場面でも防火服をきちんと着用し、ヘルメットも深くかぶっていたおかげでけがをせずにすんだ。「当たり前のこと」ができていたからこそ、やけどを負わず、消火活動に集中できたという。

 顔はススで真っ黒になったが、延焼もなく、けが人もいなかった。「自分の命を守ることが人命救助につながると気づいた」。この経験が、「なんとなく消防士になった」という安岡さんを、その後、府消防学校の「熱血教官」にさせた。

 「自分のことができて、初めて人を救えるんだ」。教官として2年間勤務した消防学校で、生徒や、消防団員に言い続けた。特に厳しく指導したのは、ヘルメットのかぶり方や制服の着方。「もっと深くかぶれ」「ボタンずれてるぞ」。身につけ方一つで自分の命が守られる。緊迫した現場では意識する暇がないからこそ、普段からくせをつけるよう伝えた。「服装にうるさい教官や、と思われてたでしょう」と笑う。

 約120人の教え子は、安岡さんの教えを守り、元気に働いているという。「そんな彼らの頑張りが、この叙勲につながったと思っています」と話した。(吉村駿)