スタインウェイ社製のピアノが街角で弾ける 宣言明け、神戸で再開

森直由
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 【兵庫】街角にあり、誰でも自由に弾ける「ストリートピアノ」。神戸市内には30台近くがあるが、その一つは世界3大メーカーに数えられる米スタインウェイ社製だ。緊急事態宣言に伴う休止期間が終わり、コロナ下の港町に再びその調べが響き始めた。

 スタインウェイは1853年に米ニューヨークで創業。「音色は透明で、響きは力強く温かみがある」とも表現される。弾き手の微妙な指使いも反映できるため、世界の一流ピアニストらに支持されてきた。

 神戸・旧居留地にある三井住友銀行神戸営業部前には、同社製の「D―274」がたたずんでいる。市によると、1973年製造だが、新品ならば約2千万円。73年から神戸文化ホール(中央区)で使われ、老朽化で2018年に引退。20年にストリートピアノとして復帰した。東京から弾きに来る人もいるという。

 新型コロナ対応の緊急事態が宣言され、休止と再開を繰り返してきた。4回目の宣言解除と修理が終わって10月10日に再び弾けるようになった。

 大阪府摂津市の小学校教諭、吉田光宏さん(49)は同26日、ショパンの「英雄ポロネーズ」を弾いた。「音の響きが良く、鍵盤のタッチもなじみやすかった。神戸市が街全体で芸術を大切にしているのがよく分かった」。初めて弾きに訪れた神戸市須磨区の男性(70)は、「音の美しさが全く違う。コロナ禍で失われた人と人とのコミュニケーションのきっかけにもなると思う」と話していた。

 ピアノの上に置かれたノートには、様々なメッセージがつづられている。

 《震災、色々乗り越えてきたけれど、この世は悲しいことだらけ。でも、仕事の帰り、日々の涙をこらえて、スタインウェイに触れて、心の傷いやしてます。がんばりましょう!》

 《皆の大切なピアノが、いつまでもここにありますように》

     ◇

 神戸市は2019年からストリートピアノの設置を始め、駅や商業施設など計28台にのぼる。久元喜造市長は、「おそらく全国一ではないでしょうか」と市のホームページでつづっている。

 きっかけは阪神・淡路大震災で全壊し、閉園した幼稚園のピアノが、近くの小学校で活用されずに保管されていたことだった。

 神戸はフルートやジャズなど、音楽とゆかりが深い。「劇場とホールだけでなく、気軽にアートが楽しめる街に」。そんな思いを込め、19年にあった音楽イベントで、試験的にこのピアノを置いてみたところ、好評だった。

 そこで幼稚園などで使われなくなったピアノの再利用を進めてきたという。市はあと2台増やし、計30台の設置を目指す。「ピアノが上手な人だけではなく、誰でも気軽に弾きに来てほしい。音楽に親しむきっかけにしてもらえたら」

 ストリートピアノの設置場所は、市のホームページで公開している。(森直由)