85年前のデュエット「千ケ滝小唄」を発掘 音楽家が盆踊り再現

土屋弘
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 埋もれていた約85年前のデュエットソングを、長野県軽井沢町に住む音楽家のマキ・奈尾美さん(61)が発掘した。別荘地・軽井沢の情景を歌い、かつては盆踊り歌としても親しまれた。その振り付けも復元。マキさんは「コロナ禍を克服して、来年のお盆にはみんなで踊りたい」と話している。

 ♯碓氷(うすい)越えれば 気も軽井沢 降りる支度を 降りる支度を 千ケ滝(せんがたき)

 「千ケ滝小唄」は、藤山一郎と渡辺はま子のデュエットで1935(昭和10)年にビクターから発売された。作曲は藤山、作詞は上田市出身の作家久米正雄で、春のツツジや浅間山の紅葉などを歌った詞は5番まである。

 千ケ滝地区は、現在のしなの鉄道中軽井沢駅の北に広がる別荘地。当時は西武グループ創業者の堤康次郎が大々的に分譲を進めており、小唄はそのPR用に作られたともいわれる。今は地元でも知る人はほとんどいない。

 マキさんがこの歌に出会ったのは約6年前。知人が録音していた古い音源を聞き、リズミカルな三味線の旋律に魅せられた。さっそくメロディーを譜面に起こしたが、歌詞はかすれてよく聞き取れない。藤山の遺族や日本音楽著作権協会JASRAC)に問い合わせても、楽譜は見つからなかった。

 そんな時、上田情報ライブラリーから軽井沢高校の古い郷土資料に久米が書いた歌詞が載っていると連絡があった。見ると、タイトルは「千ケ滝音頭」、歌詞も10番まである。音源との比較から小唄の元歌と分かり、復元作業は一気に進んだ。

 さらに調べると、小唄には歌舞伎の2代目市川猿之助(初代猿翁)の創作とされる振り付けがあることが分かった。手がかりを探していたところ、町内に住む80代の女性2人が「小学生の時に盆踊りで踊った」という。その記憶を突き合わせて、手足の動きを再現していった。

 2018年秋の軽井沢文化祭では、マキさんが歌う千ケ滝小唄に合わせて日本舞踊家元の竹本東竜さんと地元の人たちが振り付けを披露。19年夏には中軽井沢盆踊り大会の演目に加えられた。昨年と今年はコロナ禍で盆踊りは中止になったが、マキさんは来年の再開を願っている。「千ケ滝小唄は地域の宝。歌と踊りを未来に引き継いでいってほしい」(土屋弘)

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千ケ滝小唄

       作詞 久米正雄

       作曲 藤山一郎

一、碓氷越えれば 気も軽井沢 降りる支度を 降りる支度を 千ケ滝

二、春は出て見よ つつじが原に 裾に火がつく 裾に火がつく 紅がつく

三、草津街道 馬でも七里 今じゃ銀  バス 今じゃ銀バス 一走り

四、秋も来て見よ 浅間の紅葉 霧と煙の 霧と煙の ヴェール越し

五、曇る沓掛 照る軽井沢 虹がかかるは 虹がかかるは 千ケ滝