板挟みの関西スーパー取引先 モラルハザード懸念も

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栗林史子田幸香純
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 「賛成は66・68%」。集計結果がアナウンスされると、関西スーパーの臨時株主総会の会場はどよめいた。10月29日、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングとの統合は、必要な議決権数(約66・66%)をかろうじて上回るかたちで可決された。

 今回の争奪戦は、取引先が関係維持のために株を持つ「政策保有」のありかたにも改めて疑問を投げかけた。専門家は「モラルハザードが懸念される典型例」と指摘する。

「棄権」と「不行使」 違いとは

 会場では株主らに、H2Oとの統合案について「賛成」「反対」「棄権」の三つの欄がある投票用紙が配られ、福谷耕治社長らが繰り返しこう呼びかけた。「賛成でも反対でもない場合は投票しない『不行使』を」「棄権は中立ではなく、実質的には反対として取り扱われるのでご留意ください」

 「棄権」を選べば、分母にあたる議決権総数が増えて賛成票が薄められ、可決が遠のく。一方、投票用紙を出さない「不行使」が増えれば、議決権総数が減り、賛成側に有利になる仕組みだ。

 今回はH2Oや従業員持ち株会など、確実に賛成する株主が一定数いた。「不行使」を増やし、可決に持ちこむ――。関西スーパーにとって、それが統合の実現に残された道だった。

 背景には、関西スーパーとH2Oの統合に猛反対する首都圏地盤のスーパー「オーケー」の存在があった。関西スーパーの取引先株主はオーケーと取引のあるところも多く、2社の間で板挟みになっていた。

 10月には、関西スーパーの取引先140社で構成され、第2位の議決権を持つ取引先持ち株会が議決権行使について「賛成」の方針を「自主判断」に変えた。関西スーパーによる説明不足や統合案のわかりにくさなどを理由に、会員から反対の声が上がっていた。

 厳しい情勢をうけて、関西スーパーの幹部たちは取引先企業数百社をまわり理解を求めた。可決はかたいとみていた関西スーパー関係者も、総会直前には「フタを開けてみないとわからない」と弱音を吐いた。

 結果、取引株主の多くが迷ったあげくに議決権を不行使としたとみられる。想定より僅差(きんさ)での可決となった要因について、「お取引さまの不行使」と福谷社長も総会後に認めた。

「もの言わぬ株主」たち

 こうした取引先同士で株を持ち合う「政策保有株」は企業間の取引の維持など、互いへの「忠誠の証し」だ。株主総会でも、政策保有株主は基本的に経営陣に賛成する「もの言わぬ株主」となる。株主から経営陣への牽制(けんせい)が失われ、少数株主への情報開示も進まないおそれがある。日本独特の慣習だが、企業統治上は問題だとして、コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)は企業に政策保有株の削減方針を開示するよう求めている。

 今回はそのあり方に変化もあった。

大株主「気持ち察して」

 関西スーパーの議決権4位の…

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    栗林史子
    (朝日新聞記者=ダイバーシティ、企業)
    2021年11月5日15時43分 投稿

    【視点】2カ月にわたる関西スーパーの争奪戦。取材中、同僚の宮川記者が「上場している必要はあるんでしょうか」と疑問を述べていました。同感です。 関西スーパーのように取引先が多くの株を持っていれば(政策保有株主が多ければ)、株の流動性は下がり、市