「被告は治療を」裁判長が説諭、遺族「納得できない」 神戸5人殺傷

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 神戸市北区で2017年7月、住民3人が殺害され、2人が重傷を負った事件。殺人や殺人未遂などの罪に問われた竹島叶実(かなみ)被告(30)に対する公判は、刑事責任能力が争点となり、神戸地裁は4日、無罪を言い渡した。

 飯島健太郎裁判長は被告に対し、「判決の内容をよく聞いてほしいので、主文を後回しにします」と述べ、判決理由を先に朗読した。判決を言い渡した後、被告に「無罪にはなったが取り返しのつかないことをしてしまったことには変わりはない。そのことを忘れずに病気の治療にあたってほしい」と説諭した。被告は3人の刑務官に囲まれて前を向いて座ったまま、しばらく動かなかった。

 公判では、検察、弁護側の双方とも、被告が5人を殺傷した行為については争いはなかった。刑事責任能力がない「心神喪失」の人の行為は罰しないと定めている刑法39条について、元刑事裁判官で法政大法科大学院の水野智幸教授は「犯罪行為をした人自身に『これが犯罪だ』という自覚がなければ、刑罰ではなく治療が社会にとって良いことだという考え方に立っている。これは、近代法の大原則だ」と指摘する。「今回のケースでは、被告が社会にいきなり出ることはなく、入院などの措置がとられると思う。感情として受け入れるのは難しいかもしれないが、刑法の考え方からすれば、やむを得ない判断だ」と述べた。

傍聴席から怒号「人を殺して、どうして」

 今回の裁判員の一人で、判決後に記者会見に応じた神戸市の男性会社員(46)は「世間の方々、ご遺族、被害者の方々には納得できない結果になったと思いますが、日本の法律上、心神喪失状態で無罪になったことは、ご理解いただきたい」と話した。

 一方、無罪判決が言い渡されると、傍聴席からは怒号が上がった。傍聴に来ていた遺族の一人という男性は報道陣に「驚きで何も言葉が出てこない」と話した。裁判所を出る際、「人を殺して、どうして死刑にならないのか。こんな判決は聞いたことがない」と叫んだ女性もいた。

 亡くなった辻やゑ子さん(当時79)の長女と長男は「ただただ絶望しています。何の罪もない3人が無法に命を奪われたのに、犯人は法律で命を守られたことには到底納得ができません。私たちと同じような思いをする人がいなくなるよう、責任能力という制度と運用を、見直すきっかけにしてほしい」とのコメントを出した。

 事件で重傷を負った女性(69)も代理人弁護士を通じてコメントを出し、「判決を聞いて、がくぜんとしました。4年間かけてようやく取り戻しつつあった安心と生活が一気に崩れ去りました。今後が不安でなりません。検察には控訴を検討していただきたい」とコメントを出した。

 神戸地検の山下裕之・次席検事は「判決内容をよく検討し、上級庁とも協議のうえ適切に対応したい」としている。