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左手足まひ、立ち止まると罵声が エスカレーター「片側空け」の困難

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 埼玉県和光市の会社員、川瀬正広さん(49)には、エスカレーターの「片側空け」をめぐる、苦い記憶がある。

 東京では右側、大阪では左側を、「急ぐ人用」に空ける、あの習慣だ。

 40代前半、脳卒中で倒れ、左半身にまひが残った。リハビリ中は、右手で杖を持って移動した。エスカレーターに乗る際も、左手ではベルトをつかめない。体を支えるため、右手で杖を持ちつつ、右側のベルトをつかんだ。

 右側に立つと、後ろから舌打ちをされることは日常茶飯事。「邪魔だ!」「どけ」と言われることもあり、押しのけるように追い抜いていく人もいた。

 急ぐ人がスムーズに移動できるように「マナー」として広まったエスカレーターの片側空け。だが、障害のある人らにとっては、「困難」につながっている。

 鉄道会社などが立ち止まって乗るよう呼びかけ、埼玉県では歩かず立ち止まって利用するよう義務づけた条例も出来たが、実態はあまり変わっていない。

 川瀬さんはリハビリを続け、杖を使わず歩けるようになったが、左手と左足にまひが残り、右側から乗らざるを得ない。だが、「右側に立ち止まる『勇気』はありません」。

 では、どうしているのか。川瀬さんの通勤に同行し、片側空けという「マナー」が、人にとってはハードルとなっている現実を取材した。

高低差17メートル 「やたら長い」

 10月の平日。午前7時20分ごろ、川瀬さんは地元の和光市駅から東京メトロ有楽町線に乗った。永田町駅半蔵門線に乗り換え、都心の職場へ向かうのが通勤ルート。コロナ禍でテレワークが基本となったが、月1、2回は出勤する。

 午前8時ごろ。永田町駅に到着した。

 「この駅のエスカレーターは、やたら長いんです」。川瀬さんの言葉通り、有楽町線のホームから乗り換え先に向かうエスカレーターは高低差約17メートル。建物に換算すると5階を超える高さだ。立ち止まって乗ると約1分かかった。

右側に乗ったが、すぐに右手を離した

 半蔵門線のホームへ向かうエスカレーターは下り。左側に、止まって乗る人たちの列ができている。

 左側の列に並んだ川瀬さんは…

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