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iPS細胞15年、実用化へ険しい道 「死の谷」を乗り越える鍵は

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市野塊、後藤一也、野中良祐
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 iPS細胞を使った製品の承認をめざす治験がいま、国内で相次いで始まっている。2006年にiPS細胞ができたと発表されてから今年で15年。ただ、実用化に向けた計画は想定よりも遅れ、道のりは険しい。この間、世界はiPS細胞以外にも目を向けていて、政府の支援のあり方に見直しを求める声も出ている。(市野塊、後藤一也、野中良祐

製品になる最後の難関、企業治験始まる

 山中伸弥・京都大教授がノーベル医学生理学賞を受賞したのは2012年。その際、山中さんはノーベル賞サイトの電話インタビューに「人生の目標は、iPSの技術をベッドサイドに届け、多くの患者を救うことです」と答えた。いま、国内で薬事承認を得るための治験が複数進む。

 京都大発のベンチャー「メガカリオン」(京都市)は4月、iPS細胞からつくった血小板で治験を始めると発表した。重い貧血や、がんなどの治療で血小板が減っている人に使う。血小板製剤は献血をもとにつくられるが、先進国では少子高齢化もあり、献血不足が課題になっている。安定供給への期待は大きい。赤松健一社長は「順調に進めば、23年の承認をめざす」と話す。

 慶応大発のベンチャー「ハートシード」(東京都新宿区)も、iPS細胞からつくった心筋細胞を使い、重い心不全患者への治験を始めた。同社の福田恵一・慶応大教授は「再生医療の発展の第一歩。(ほかに治験をしている企業と)ともに高め合いたい」と意気込む。

 京都大ではiPS細胞からつくった神経細胞パーキンソン病患者に移植する治験も進む。今年中に参加者7人全員の移植を完了する見通しだ。大日本住友製薬がバックアップ。iPS細胞を使った製品化の第1号をめざしている。

 ただ、道のりは順調とはいえない。09年に文部科学省がまとめた工程表では14~16年ごろに臨床研究や治験を始めるめどが掲げられていた。実際には14年の加齢黄斑変性の臨床研究以外は18年以降までかかった。

 工程表は13、15年と改訂を重ねる度に目標が後ろ倒しになり、最終的には「患者に過度な期待を与える可能性があることに賛否両論があった」(文科省)として19年に廃止された。企業が取り組むことを発表していた治験も軒並み遅れ、現在も、実用化が明確に見えているものはない。

iPS細胞つくるのに10億円、コストどう減らす?

 課題の一つは資金だ。一般的に医薬品の治験から製品化までの関門は厳しく、「死の谷」とも呼ばれる。iPS細胞は作製のための環境整備なども含めて開発コストに10億~20億円は簡単にかかるとされる。

 ハートシードは、6月に海外…

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