「82年生まれ、キム・ジヨン」訳者が語る 韓国文学に共感する理由

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金順姫
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 日本で韓国文学が読まれている。すでにブームの域を超え、固い読者層を得たと言えそうだ。次々に翻訳を手がけてきた斎藤真理子さんに聞いてみた。韓国文学が人々の心をつかんでいるのはなぜか。その背景には何があるのか。金順姫

さいとう・まりこ

1960年、新潟県生まれ。明治大学文学部で考古学を専攻。サークルで韓国語の勉強を始めた。大学卒業後、校正や編集の仕事を続けた後、91~92年に韓国の延世大学に留学。近年、話題作を次々と翻訳している。訳書に「こびとが打ち上げた小さなボール」(チョ・セヒ、河出書房新社)、「ディディの傘」(ファン・ジョンウン、亜紀書房)など。

 韓国人詩人による詩集の日本語版を手にして、斎藤さんはしみじみと言った。「こういうものが出せるようになったのは、韓国の文学を読む日本の読者の裾野が広がったからですね。裾野に支えられて、出版が続いています」

 その裾野はどう形作られていったのか。斎藤さんがまず挙げた作品が、ハン・ガンの「菜食主義者」だ。出版社クオンが2011年、「新しい韓国の文学」シリーズの1冊目として発刊した(きむ ふな訳)。世界的に権威あるブッカー国際賞を16年に受賞。「すでにその5年前に、いい日本語で読める翻訳本が世に出ていたのです」

 15年には、斎藤さんが韓国人翻訳者と共訳したパク・ミンギュの「カステラ」(クレイン)が第1回日本翻訳大賞を受賞した。この2作品が注目を集め、「韓国文学って、おもしろいんだね」という流れにつながっていったと、斎藤さんは考えている。

読者層広げる決定打

 かつてなく書名が知れ渡ることになる小説の日本語訳が、18年に登場する。チョ・ナムジュの「82年生まれ、キム・ジヨン」(筑摩書房)。韓国社会で女性が日常的に受けてきた差別を描くこの作品も、斎藤さんが訳した。

 「自分は構造的な差別を受けている当事者なんだと、この本を読んではっきり認識した日本の女性読者がたくさんいたのでしょう。この世の仕組みが私に味方をしていない、自分の努力不足のせいで不利益をこうむっているのではないと」

 日本でも共感が巻き起こり、韓国文学の読者層を広げるうえで決定的な一打となった。発行部数は23万部を超えている。

 日本に住む人たちが韓国文学…

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