第13回貧困や孤立は頑張りが足りないから? ヤングケアラーの若者の思い

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富岡万葉
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 大人の代わりに家族の介護や家事を担ってきた人たちは、進学や就職の選択肢を制限されやすく、その後の生活で影響が続いている。孤立したり、経済的な困難に直面したりするケースも少なくないが、国の支援は緒に就いたばかりだ。

週7日のバイト代 祖母の介護費と生活費に消える

 ゼリー飲料や缶詰、調味料――。昨年7月、東京都内の女性(25)は、蒸し暑い部屋の中で、段ボールを開けた。すぐに何日分あるか、何日生きられるかを数えた。「助けてもらえるとは思ってなかった。『死ぬな』って言ってくれた気がした」と振り返る。

 ひとり親家庭で育った。高校卒業後、目が悪く1人では歩けない祖母の介護をしながら、大学で学び、接客のアルバイトを掛け持ちした。週7日働いて手取りは月20万円弱。すべて介護費と生活費に消えた。

 家族が地元の役所に相談に行った。職員からは「限界まで家で面倒を見て」と言われた。「学校では行政に頼るよう習ったのに実際には助けてくれない。そもそも平日の昼間に自分で役所に説明に行く暇がどこにあるんだ」

 祖母が入院するまで介護は4年近く続いた。家族関係がぎくしゃくし、実家を出て、家賃3万円の家に。大学で学びながら派遣社員として働き、昨春に正社員として内定を得た。「(経済的に安定すれば)やっと勉強に集中できる」。そこにコロナ禍が起こった。

つかんだはずの社員の内定 コロナ禍で一変

 転職のために派遣の仕事を昨年3月に辞めて、収入はゼロに。内定先からはコロナ禍を理由に4月の入社を何度も先延ばしされ、アルバイトもできない。1カ月分の生活費ほどあった貯金を崩しながらしのいだ。

 コロナ下で大学構内は立ち入り禁止になり、外出もままならない。追い詰められ、夏ごろには部屋で横になって天井を見ていた。スーパーで値引きされた80円の食パンを数日かけて食べた。そのうち家賃も払えなくなった。

 6月末ごろ、電話で「やっぱ…

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連載その先に見えたもの(全13回)

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