岸田政権のコロナ対応、「後手」の教訓 新指標には乏しい数値目安

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枝松佑樹 石塚広志 森岡航平
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 新型コロナウイルス対策で、政府の分科会が新たな指標をつくった。緊急事態宣言の発出が遅れた過去の反省を踏まえたとするが、具体的な数値は乏しく、先手を打った対策をとれるかは見通せない。海外が感染の再拡大に直面する中、「第6波」へ向け、指標を効果的に使えるのか、医療提供体制を整備できるのか、課題は多い。

 「数週間後の医療逼迫(ひっぱく)を継続的に予測し、先手を打ち、必要な対策を講じていきたい」。政府の分科会の尾身茂会長は8日の会合後の記者会見で、新指標の意義についてこう述べた。

 ワクチンの接種率が70%を超え、軽症者の割合が多くなった。全国共通の目安だった「人口10万人あたりの新規感染者数」と、医療逼迫の関係性が地域によって大きく異なることなどもわかってきた。こうした状況を踏まえ、指標を見直したという。

 これまでの緊急事態宣言では発出の判断が遅れ、感染拡大がおさまらずに宣言が長引き、政府は批判を受けた。新指標でも判断が遅れれば、同じような状況になりかねない。

 尾身氏も会見で、こうした状況があったことを認めた。この反省なども踏まえ、分科会は今回、「先手を打つためのツール」を新たに示した。各年代の新規感染者数やワクチン接種率などを入力すると、1~4週間後の重症者数や必要な確保病床数が推定される。

 新指標では、レベル2から3に移行する際に、「3週間後に確保病床が入院者で埋まる」ことを判断材料とする。分科会は、都道府県がこのツールを使い、従来の指標なども参考にしつつ、総合的に判断してもらうことを想定する。

 ただ、従来の指標には新規感染者数などの具体的な数値の目安があった。これに対し、新指標で具体的な数値が目につくのは、レベル3で病床使用率が入った程度。判断を任される都道府県にとってわかりやすいとはいえず、今後、混乱する可能性もある。

 分科会メンバーの舘田一博・東邦大教授(感染症学)は、全国一律の目安を示さなかった新規感染者数について、「軽視するわけではない。1日あたりどれくらいの感染者数なら危険なのか、自治体にツールを使って判断してもらう」と解説する。

 医療現場はどうみるのか。グローバルヘルスケアクリニックの水野泰孝院長は、新指標が医療逼迫の度合いを重視したことについて、「今後は感染者の多くが無症状や軽症で終わる可能性がある。現実的な対応だ」と指摘する。

 一方、軽症者を外来で診る開業医が、自宅療養になった患者の体調確認にどこまで関わるかなど、「まだ十分に議論されていない」と問題提起する。「経口薬(飲み薬)が今後承認されたとしても、どの診療所でも出せるというわけではない。また、自宅療養者を積極的に診療できるような医師への支援が必要だ」。新指標のレベル4の状況に備え、都道府県が病床を十分に確保できるのかなど、課題も残る。(枝松佑樹、石塚広志)

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